「15番目か16番目」の伏兵がサヨナラ弾 “円陣番長”が生かした主砲からのアドバイス

サヨナラアーチを放った巨人・岸田行倫(中央)【写真:中戸川知世】
サヨナラアーチを放った巨人・岸田行倫(中央)【写真:中戸川知世】

原監督仰天「伏兵が大きな仕事をしてくれた」

■巨人 2ー1 阪神(30日・東京ドーム)

 巨人は6月30日、本拠地・東京ドームで行われた阪神戦で、1-1の同点で迎えた延長10回に岸田行倫(ゆきのり)捕手が代打サヨナラ1号ソロを放ち、劇的勝利。連敗を3で止めた。岸田は試合前に円陣の中心でユーモアあふれる声出しを行うことで知られ、“円陣番長”の異名を持つ。普段は大城卓三、小林誠司に次ぐ“第3捕手”の立場だが、少ないチャンスを見モノにした。

 延長10回の攻撃も、2死走者なし。ベンチ裏で準備していた岸田は、阿部慎之助ヘッド兼バッテリーコーチから代打での出番を告げられ、「ホームランを打ってこい」と背中を押された。とは言え、生涯初のサヨナラホームランが本当に飛び出すとは、想像していなかった。カウント1-0から、阪神4番手・加治屋蓮投手が投じた外角のカットボールをとらえると、打球は“逆方向”の右中間へ飛び、フェンスをギリギリ越える。ナインから祝福のウォーターシャワーを浴びせられ、「9回のチャンス(無死一、二塁の1打サヨナラ機)では、僕がベンチで水を用意していた。逆の立場になって不思議な感じです」と夢見心地だった。

 原辰徳監督も「こう言ったらアレだけれど、伏兵が大きな仕事をしてくれました。(岸田は)順番からすれば、ベンチに入っている17名(の野手)のうち15番目か16番目の選手ですから」と仰天。2017年ドラフト2位で社会人の大阪ガスから入団した岸田は、正確なスローイングと、昨年イースタン・リーグで打率.305(154打数47安打)をマークした打撃に定評がある。ホームランは2020年10月31日・ヤクルト戦の6回にプロ初本塁打を放って以来、3年ぶり通算2本目だ。

同い年の岡本和へ贈るバースデープレゼント

“円陣番長”ぶりは以前から、球団の公式YouTubeチャンネルなどを通してファンも認識。ひそかに購入しておいたパーティーグッズのメガネを使うなど、手が込んでいる。「そっちばかりにならないように、今年は控えめにいきたい」と言いつつ、3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)開催中に行われたオープン戦の試合前には、「この前、鉄板焼き店に行ったら、そこのシェフもこれ(ペッパーミル)をやっていました。日本中がひとつになっていると感じました。僕らもチーム1つになっていきましょう!」と“名作”を披露した。

 6月30日は、同い年の岡本和真主将の誕生日。「このホームランをプレゼントにしたい」と岸田は笑った。兵庫・報徳学園高3年の9月には、侍ジャパン高校代表の一員として「BFA 18Uアジア選手権」に出場し、全試合で岸田が3番、当時奈良・智弁学園高3年の岡本和が4番を務めた経緯がある。「(岡本和に)打撃のことを聞けば、親切に教えてくれます。最近は僕が軸足の大事さを忘れていて、『意識した方がいいよ』『それは大事やで』という話をしました」と明かした。軸足にしっかり体重が乗っていたからこそ、外角球を逆らわずに右中間へ運べたのかもしれない。

 今季も1軍出場はまだ9試合だが、.375(8打数3安打)の高打率を誇る。“伏兵”や“円陣番長”のままでいるつもりは、さらさら無い。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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