巨人相手に幻のノーノー、92球マダックスも オリを支えた大エース・金子千尋の功績

オリックス、日本ハムで活躍した金子千尋【写真:荒川祐史】
オリックス、日本ハムで活躍した金子千尋【写真:荒川祐史】

オリックスのエースとして活躍、1日には引退セレモニーが行われた

 オリックス、日本ハムで活躍した金子千尋氏の引退セレモニーが、1日の日本ハム-オリックス戦(エスコンフィールド北海道)の試合前に行われた。現役時代には沢村賞をはじめとする数々のタイトルを受賞。今回は、金子氏の数々の名場面を振り返っていく。

 金子氏は長野商、トヨタ自動車を経て、2004年のドラフト自由枠でオリックスに入団。プロ入り当初は故障に苦しめられたが、3年目の2007年途中から先発に定着する。翌2008年には自身初の開幕投手を務めて10勝を挙げ、そこから4年連続で2桁勝利を記録。2010年には最多勝のタイトルにも輝き、エースの座を確固たるものとした。

 2013年には沢村賞の選考項目7つを全て満たすも、同年に田中将大投手(楽天)が24勝0敗を記録した巡り合わせもあって受賞はならなかった。それでも、翌2014年にも圧倒的な投球を披露し、最多勝、最優秀防御率、リーグMVPを獲得。前年は惜しくも逃した沢村賞にも輝いた。

 2015年からはケガもあって2年連続で7勝に終わったが、2017年は12勝を挙げて復調。しかし、2018年は再び故障に見舞われて4勝にとどまり、同年オフには14年間在籍したオリックスを離れ、日本ハムに活躍の場を移した。

 北の大地で迎えた2019年は先発と中継ぎを兼任するフル回転の活躍を見せ、8勝を挙げて防御率3.04と幅広い起用に応えた。同年4月18日に古巣のオリックスから白星を挙げたことにより、史上18人目となる全12球団からの勝利という快挙も達成した。

 移籍1年目から大いに存在感を発揮した金子だが、2020年以降は調子を取り戻すことができず、登板機会も減少。2022年は2軍で14試合に登板して7勝3敗、防御率2.49と好投したものの、1軍での登板はわずか3試合にとどまっていた。

92球でマダックス、幻のノーノーも

 ここからは、試合をピックアップして金子の活躍を振り返っていきたい。

○月間2度目の14奪三振&1安打完封勝利(2014年4月25日)

 4月4日の14奪三振&被安打2での完封勝利からわずか21日後、再び圧倒的な投球を見せる。序盤から快調に三振を積み重ね、5回には節目の通算1000奪三振も達成。7回から8回にかけて6者連続三振を記録するなど終盤まで勢いは衰えず、月間2度目の1試合14奪三振を達成。許した安打はわずか1本と、完璧なピッチングを披露した。

○9回無安打無失点、“幻の”ノーヒットノーラン(2014年5月31日)

 キャリアの中でも最高の投球の一つとして、この試合を挙げるファンは少なくないだろう。錚々たるメンバーを揃えた巨人打線を相手に11個の三振を奪い、9回を投げきって1本も安打を許さなかった。味方が得点を奪えず、快挙達成こそならなかったが、まさに“幻の”ノーヒットノーランと形容できる、圧倒的な快投だった。

○2安打無四球、わずか92球で完封の“マダックス”達成(2017年4月17日)

 100球未満で完封勝利を記録することを、MLBの大投手になぞらえて「マダックス」と呼ぶ。この日の金子は多彩な球種をゾーン内で巧みに操り、この年優勝したホークス打線を手玉に取る。2安打無四球、わずか92球で完封勝利を記録し、希少な記録である「マダックス」を見事に成し遂げた。

 2008年から2014年までの7シーズンで6度の2桁勝利を挙げ、球界を代表する先発投手として活躍した。2度の最多勝に加えて、最優秀防御率、最多奪三振、リーグMVP、沢村賞という華々しいタイトル獲得歴が、その傑出度を物語ってもいるだろう。

 山本由伸投手が台頭する前のオリックスにおける大エースとして一時代を築き、苦しい時期のチームを支えた。チームが優勝を争う原動力にもなった2014年の圧倒的なピッチングをはじめとする、まばゆいばかりの輝きを放った全盛期の投球は、今後も決して色褪せることなく、ファンの心の中に残り続けるはずだ。

(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)

(記事提供:パ・リーグ インサイト

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