村上宗隆と「願わくば2年後に」 マクガフが苦しむ古巣に贈るエール「彼らは大丈夫」

Full-Countの取材に応じたDバックスのスコット・マクガフ【写真:川村虎大】
Full-Countの取材に応じたDバックスのスコット・マクガフ【写真:川村虎大】

Dバックスのマクガフ、来日当初は練習量に驚き「かなり多い」

 偶然にも着用していたトレーナーは、ヤクルトの球団カラーと同じ緑色で文字が記されたものだった。ダイヤモンドバックスのスコット・マクガフ投手は、記者が日本人だと分かると「こっちにおいで」。そう自らのロッカーに案内してくれた。Full-Countの取材にも気軽に応じ、片言の英語での質問に「ダイジョウブ。モンダイナイヨ」。記者が逆に励まされてしまった。

 6月30日(日本時間7月1日)から始まったエンゼルスとの敵地3連戦は、大谷翔平投手を追う日本メディアが多く集結していた。昨季までの4年間、ヤクルトでプレーしたマクガフにも連日、記者が話を聞きに行った。「ゴー・ゴー・スワローズ」「日本のファンに会えなくて寂しい」。今でも日本のファンから、手紙やユニホームが家に届くと明かしてくれた。

 マクガフが日本に来たのは2018年オフ。来日当初は練習の違いに驚いた。「特にマイナーリーグ(2軍)はね。取り組むことや練習が(米国と比べて)かなり多いから、それに慣れる必要がある。走り込みやコンディショニングもこっちよりかなり多い。そういうことを含め、慣れなければならない点がいくつかあった」。それでも1年目から6勝3敗、18ホールド、11セーブの成績を残した。

 慣れるのに時間がかかった“日本式”の練習は一度習得すると、今でも自らのルーティンになっている。バドミントンのラケットを使ったシャドーピッチングのドリルは、日本から継続していると明かす。「日本は練習の仕方が非常にうまいと思う。とても熱心に、誰もが一生懸命に取り組む」。現在のメジャーでの成功を手助けしている。

田畑、伊藤両コーチから教わったスプリットで大谷を一直斬り

 守護神として2021年に日本一、2022年にセ・リーグ優勝を果たすと、同年オフにメジャー再挑戦を希望しヤクルトを退団した。日本のファンやチームメートの温かさに触れ、当時は「自分は(日本に)戻ると思っていた」。それでも、同じヤクルトの守護神を務め、メジャーも経験している“良き理解者”高津臣吾監督の後押しもあり、再び挑戦する道を選んだ。

 奇しくも契約したのは元ヤクルト内野手、トーリ・ロブロ氏が監督を務めるダイヤモンドバックス。「間違いなく修正期間があったが、今は体調はいいし、チームも準備を助けてくれた」。4月は防御率3.95と苦しんだが、17試合連続で自責点なしも記録。ドジャースら強豪ひしめくナ・リーグ西地区首位を走るチームで、守護神も任されるようになった。

 中でも、“決め球”となっているスプリットは日本時代に習得したものだ。1年目の2019年に田畑一也コーチに握り方を教わり、2021年からの2年間で伊藤智仁コーチから有効な使い方を教わった。「彼らのおかげで僕は再起して一流の球が投げられるようになった」。1日(同2日)には大谷と対戦。そのスプリットで一直に抑えた。

ヤクルトの成績は今でもチェック…5位に沈むが「彼らは解決策を見つける」

 今でも当時のチームメートとは連絡を取り合い、試合結果はチェックするという。4日の時点でヤクルトは5位に沈む。「(順位は)知ってるよ。悲しいよ。彼らにはいい結果を出してほしい。願わくば復調して、もっと勝ってもらいたい」と切実な思いを語る。

「タカツは素晴らしい監督だし、コーチ陣も非常にいい。だから彼らは解決策を見つけるだろう。毎年どのチームにもいい時期と悪い時期があるものだ。彼らは大丈夫」

 不振の村上宗隆内野手にもエールを送る。昨季、打率.318、56本塁打、134打点で令和初、史上最年少の3冠王に輝いたが、今季は打率.234、12本塁打。マクガフは「トレイ・ターナー(フィリーズ)とかもスロースタートだった」と、3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の影響も推測。その上で、苦しむ23歳を慮った。

「昨シーズン、彼はあまりにいい状態だった。見ていてとても楽しかった。ただ、若い選手は特に、そのレベルを維持するのが難しい。周囲やメディアの注目を浴びるからね。シーズンが進むにつれて打撃の調子は少し上がってきているのではないかな。だからシーズンが終わるまでにはタイミングとか色々、本人が分かるようになると思う。彼はきっと見ていて楽しいシーズンを送るよ」

 村上は昨オフに3年契約を結び、2025年のシーズン終了後に、ポスティングシステムを利用してのメジャーリーグ挑戦を認められている。マクガフはその時、36歳になるが、「願わくは2年後に会いたいね」。“共演”が叶うまでは、まだまだ負けじと腕を振るつもりだ。

著者プロフィール
○川村虎大(かわむら・こだい)1998年2月、茨城・土浦市出身。土浦一高から早大に進学。早大では軟式庭球部に所属するかたわら、ソフトテニス専門誌に寄稿。2021年からFull-Countに所属し、2023年は第5回WBCを取材。その後、エンゼルスを中心にMLBを取材している。

(川村虎大 / Kodai Kawamura)

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