独立Lでも“控え”だった男の大逆襲…オリ茶野篤政 古巣コーチが見た活躍の必然

オリックス・茶野篤政【写真:矢口亨】
オリックス・茶野篤政【写真:矢口亨】

古巣・徳島インディゴソックスの橋本球史コーチ「彼は群れないし、流されない」

 プロの世界で活躍するには必ず理由がある。オリックスの育成4位ルーキー・茶野篤政外野手はリーグ3連覇、2年連続日本一を狙うチームでレギュラー格として奮闘している。わずか1年前までは独立リーグの“控え”だった男を、古巣・徳島インディゴソックスの橋本球史コーチは「この(成長)スピードは想像していなかった」と語る。

 茶野は昨年、名古屋商科大を経て徳島インディゴソックスでプレーしたが、開幕戦では控え選手として試合を見つめていた。打撃、脚力、肩の強さは一定以上の力は持っていたが、橋本コーチは「独立リーグからプロに行く選手は一芸を持った選手が多いのですが、茶野はそこまで抜けたものはなかった」と振り返る。

 それでも、ドラフト会議までの約半年間の成長スピードは「僕が見た中でもトップクラス」と断言する。最短でのNPB入りを目指す選手が集まる独立リーグ。厳しい環境の中では、時に“甘え”も出てくる。そんな中でも茶野は一心不乱に野球だけを追い続けていたという。

「どこかでプロに行きたい目標はあるけれど、遊びたい、他の選手と仲良くなって“なぁなぁ”になる場合もあります。ですが、彼は群れないし、流されない。コツコツ、淡々と自分で決めたことをやり続けた。色気づくこともなかったし、レギュラーで出場しても準備、片付けも積極的にやる。チームメートで茶野を悪くいうやつは1人もいなかった。ゴミを見つけたら拾いますし、どれだけ真面目なんだろうって」

徳島インディゴソックス・橋本球史コーチ【写真:喜岡桜】
徳島インディゴソックス・橋本球史コーチ【写真:喜岡桜】

独立からNPBへ「“たった1年”でも目指し続けることは簡単じゃない」

 結果を求めるがあまり、技術に走りがちになる選手が多い中、基本を怠ることなく練習を続けた。「プロを目指し続ける。当たり前のことと思いますが“たった1年”でも、目指し続けることは簡単じゃない。毎日、泥だらけになって本気で取り組んでいました」。努力は実を結び、レギュラーを獲得すると最終的には打率.316、2本塁打、リーグ2位の37盗塁をマークした。

 育成ながらドラフト指名された時には「いつかスタメンを獲る選手になると思っていた」と振り返るが、「1年前は独立でスタメンじゃなく、1年後はオリックスの1軍でスタメン。このスピードは想像していなかった。運も持っているし、それを逃さなかった」と、茶野の努力を称える。

 高校、大学では無名だった選手が、わずか1年間で1軍の主力に。“茶野効果”は独立リーグ全体にも大きな影響を与えているという。

「岸潤一郎(西武)が1軍の試合に出場してから、少し間がありました。岸は甲子園で活躍したスター選手で、茶野とはスタートが違う。選手にとっては一番の見本。練習でも『茶野さんならこうやっていた』という声も聞く。スカウトも活発に来てくれている。選手、球団にもいい影響を与えてくれている」

 開幕前に支配下登録を掴み、ここまで1度も2軍に落ちることなくシーズン折り返しを迎えた。「怪我なく1年間やってほしい。ゆくゆくはタイトルを奪ってほしい」。共に過ごした橋本コーチは独立、育成の星として輝き続けることを願っている。

(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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