足踏み続く西武韋駄天の“新境地” 4番からの金言を糧に…胸に抱く「変えない」決意
2軍戦で7本塁打を放ち1軍再昇格を果たした西武・山野辺
29歳の内野手が、手応えを掴みつつある。西武の山野辺翔内野手は、社会人の三菱自動車岡崎から2018年ドラフト3位で入団。170センチと小柄ながらパンチ力のある打撃が魅力だが、1軍に定着できずにいる。5年目の今季は2軍で好成績を残し、7月2日に1軍昇格。自分のスタイルを貫き、殻を破ろうとしている。
今季は開幕1軍入りしたが、4月17日に出場選手登録を抹消。その後、6月10日のイースタン・リーグ楽天戦では2打席連続本塁打を放つなど2軍で42試合に出場し打率.306、7本塁打をマークした。打撃好調のきっかけとなったのは、2軍の試合でチャンスに凡退したことだった。
「自分は引っ張りが多いのですが、逆方向を狙ったバッティングをして、最悪の結果になりました。試合後のミーティングで小関さん(竜也・ファーム野手総合兼打撃コーチ)に『変えるな』と言われました。打席に立つとき、チームメートもベンチから『変えなくていいよ』と声をかけてくれるようになり『引っ張っていいんだな』と思うようになりました」
これまでも、逆方向に打つことを試したが上手くいかなかった。さらに、試合の状況によって打撃を変えていたことも、いい結果に繋がらなかったのではないかと考えている。
「自分はホームランバッターではないので、簡単に三振をしないで相手ピッチャーに球数を投げさせたり、相手の嫌がるようなバッターになろうといろいろ考えてやっていましたが、無我夢中に1球1球打ちにいったほうが良かったんじゃないかなと思います。山川(穂高)さんからは『打席に立つときには、まず3球振る準備をするように』とアドバイスをもらいました。シンプルに考えられるようになり、思い切りいけるようになりました」
出場機会を増やすため外野にも挑戦
2020年は1軍で53試合に出場したが、飛躍が期待された2021年は、度重なる怪我の影響で25試合の出場に留まった。外崎修汰内野手が骨折で離脱後は出場機会を得ていたが、一塁にヘッドスライディングをした際に左手親指を損傷。靭帯の手術を受け長期離脱を余儀なくされた。
「一塁にヘッドスライディングなんて、アマチュア時代にもほとんど経験がないのに、あの時セーフになりたいと思ってやってしまいました。源田(壮亮)さんや滝澤(夏央)は上手いのでやっても怪我をしないですが、自分は得意じゃないのにやってしまった。チャンスをいただいたのに、すごくもったいないことをしました」
出場機会を増やすため外野にも挑戦したが、慣れない中堅で出場した2軍戦で守備の際に左手首を損傷し、再び長期離脱となった。「グラブが地面に引っかかってしまったのですが、後日栗山(巧)さんに『引っかからない出し方があるよ』と教えていただきました」。シーズン終盤には、1軍で初めて外野で出場し、痛恨のタイムリーエラーをおかした。
「『本当にすみません』という感じです。アマチュア時代も外野を守ったことがなく、なかなか実戦での機会も少ないですし、器用ではないので毎回不安はあります。外野ができたら幅は広がると思うので、練習しています」
試行錯誤を繰り返してたどり着いた答え
昨季は30試合に出場し、打率.152と結果を残せなかった。今季は2軍で打撃面のアピールに成功したが、1軍では9試合に出場し打率.167(8日現在)と、低迷している。
「年齢的な焦りはもちろんありますが、やり続けることも大事だと思っています。今までいろいろ変えてしまっていた。いくつかやることを決めて、それを続けていきたいと思っています」
試行錯誤を繰り返し、たどり着いた答えは「自分の形を変えないこと」。2軍で掴んだ確かな手ごたえを持って、1軍の壁に挑む。
(篠崎有理枝 / Yurie Shinozaki)