熱烈ファンの涙に「僕もうるっと」 長い故障離脱を越えて…2軍球場で感じた“野球の力”

日本ハム・今川優馬【写真:荒川祐史】
日本ハム・今川優馬【写真:荒川祐史】

日本ハムの今川優馬、2軍本拠地に集まったファンに“神対応”

 新型コロナウイルスによる各種制限の緩和に伴い、NPB12球団では少しずつサインや写真撮影といったファンサービスをコロナ以前に戻す動きが出てきた。一方で、今季ほど各球団からファンに向けての「注意喚起」があった年もない。SNSなどで選手とファンの距離が縮まったことで、誹謗中傷に悩む選手も後を絶たない。

 本来、選手とファンの関係はこんなものではなかったはずだ。そう感じさせてくれる選手が日本ハムの今川優馬外野手だ。

 8日に千葉・鎌ケ谷で行われた楽天との2軍戦、今川は2安打し決勝本塁打も放つ活躍を見せた。そして試合後は選手入り口から寮までの約100メートル、びっしり並んだファンにサインをし続けた。100人以上はいただろうか。笑顔を絶やさず、写真撮影のオーダーにも応じた。最後の1人までやり切った時、試合終了から実に1時間半が経っていた。

 日本ハムは選手に「ファンサービス・ファースト」の刷り込みを忘れない。その上で今川はサインを断らない理由を「こんなにありがたいことはないじゃないですか。現役を退いた時に、こんな機会はまずない。だから今のうちに、ファンの皆様方へお返しをしようと思って」と口にする。

怪我から練習に復帰すると驚きの事件が「僕を見て泣いてくれた」

 今季の今川は、4月29日のソフトバンク戦で左すねに自打球を当て負傷。骨の打撲である骨挫傷と診断された。回復には時間がかかり、6月になってようやく実戦出場の準備をすべく鎌ケ谷へやってきた。するとある練習日に、驚きの“事件”があったのだという。

「僕が野球をやっている姿を見て、泣いてくれたファンの方がいたんです」

 今川より少し上くらいの年齢の、男性だったという。「僕もうるっと来てしまって……」。プロ野球選手の、あまりにも大きな力を感じた瞬間だった。

 コロナ禍が続いていた2021年に入団してきた今川にとっては、ファンとのふれあいは実質今季が初めて。ヒーローのサインを求める人の波を見て「こんなに鎌ケ谷に人がいるなんて」と驚かされたのだという。

「待っている人のためにも、1日でも早く1軍へ戻りたい」。応援が選手の力になり、プレーにファンは勇気づけられる。選手とファンがリスペクトしあう“幸福な関係”が、もっと広がっていけばいいと、切に思う。

(羽鳥慶太 / Keita Hatori)

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