「野球を続けるか迷っていた」 一般入試からMLBへ…CY賞右腕にあった“転機”

ガーディアンズのシェーン・ビーバー【写真:ロイター】
ガーディアンズのシェーン・ビーバー【写真:ロイター】

2020年にサイ・ヤング賞を獲得したガーディアンズのビーバー

 投手にとって最高峰の賞を獲得した右腕でも、アマチュア時代は決して順風満帆とはいかなかった。2020年にサイ・ヤング賞を獲得したガーディアンズのシェーン・ビーバー投手は名門カリフォルニア大学サンタバーバラ校(UCSB)に入学したが、その時「野球を続けるか迷っていたんだ」と明かす。当時は決して有名な投手ではなかった。

 落ち着いて考えてから言葉を紡ぐような話しぶりからクレバーさが伝わってきた。エンゼルスの本拠地であるカリフォルニア州オレンジ郡出身の右腕。今年から記者が大谷翔平投手を担当していることを伝えると、「アナハイムに滞在しているの? 移動とかいつもと違って大変だよね? でもいいことさ。(取材を)楽しんでくれるといいよ」と気軽に取材に応じてくれた。今季も、本来の成績からは落としているが、防御率3.77、5勝、95奪三振はいずれもチームトップ。前半戦をア中地区首位で折り返すことに貢献している。

 ビーバーは2016年のMLBドラフト4巡目(全体122位)で当時のインディアンスから指名されてプロ入り。2018年にメジャーデビューすると、同年は11勝を挙げた。新型コロナウイルスの影響を受け60試合の短縮シーズンになった2020年は12試合に登板し8勝1敗、防御率1.63、122奪三振で最多勝、最優秀防御率、最多奪三振の3冠。サイ・ヤング賞を獲得した。ここまで5シーズンで3度の2桁勝利を挙げているが、高校時代は野球を続けるかすら迷うほどの投手だった。

 ノーベル物理学賞を獲得した中村修二氏らも教授を務める名門校。高校時代の球速は85~88マイル(約136.8キロ~約141.6キロ)と今より10キロ以上も遅く、推薦入学ができるかはわからなかった。「野球をプレーしても、しなくても、UCSB入学が第1志望だった。勉強のために、この大学の入学を希望したよ」。必死で勉強しているところに、高校時代のコーチから「大学でも野球をプレーする機会がある」と電話で告げられた。「実際に勉強の成績だけでは入れるかわからなかったから、入学の手助けになったよ」と振り返る。

大学時代は勉学を両立「今振り返ってもどうやってこなしてたのか」

 学問と野球の両立は決して楽ではなかった。3年終了時にプロ入りしたため、引退後に再び単位を取得する必要があるという。

「今振り返ってみると、自分自身でも、チームメートや友人を含めて、限られた時間でどうやって練習、ウエートトレーニング、コンディショニング、食事、勉強を全てこなしていたのかわからない。とてもタフだった。ただ、いい(タイム)マネジメントができたと思うし、間違いなく簡単なことではなかった」

 自らを律し、勉学にも励んだ大学生活。知識に基づいたウエートトレーニングやリカバリーの仕方が成長につながった。大学時代に、球速は約3マイル(約4.8キロ)ほど速くなり、投手としてもドラフト候補にまで成長した。「自然(に成長した)部分が大きい。でも、ウエートトレーニングのメニューを組んで、健康管理をして、リカバリーについて学んだ。そして、いい大学のプログラムで学べたことは私にとって特別なことだった」と感謝する。

 野球のキャリアが好転した大学生活だったが、当時はメジャーで活躍する姿を想像できなかった。「大学でプレーすることですら見当がつかなかった。(大学入学は)私にとって素晴らしいことだったし、『行けるところまで行こう』という意識だったよ」。記者が取材したときは、エンゼルス戦の最中だった。日本人記者の僕に「(勉学と野球の)二刀流もとても難しいことだよ」と最後は茶目っ気たっぷりに笑った。

(川村虎大 / Kodai Kawamura)

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