42点損する中日打線に潜む“元凶” 首位阪神とHR数たった2本差なのに…なぜ最下位?

中日・立浪和義監督【写真:荒川祐史】
中日・立浪和義監督【写真:荒川祐史】

京田&阿部の二遊間主力を放出→立浪監督期待の若手が台頭

 中日が、苦しい戦いから抜け出せないでいる。開幕直後から借金生活は続き、最下位ターンが現実味。5位ヤクルトとは0.5ゲーム差だが、Aクラスとは10.5ゲームも離れている。オフに主力を放出するなど断行した血の入れ替えは一定の成果が見えてきたものの、それを上回る見当違いの連続。貧打が課題の打線には、根源的な“元凶”も潜んでいる。

 昨季まで二遊間を担ってきた阿部寿樹、京田陽太の2人をトレードで他球団に出し、ファンをざわつかせたオフから8か月がたった。世代交代へと舵を切った立浪和義監督の意志は、徐々に形になりつつはある。ここまで58試合に出場している20歳の龍空は、打率.193と打撃こそ苦しんでいるが、守備は一級品。セイバーメトリクスの指標を用いて分析などを行う株式会社DELTA(https://1point02.jp/)によると、守備全般での貢献を示す「UZR(Ultimate Zone Rating)」は遊撃で両リーグダントツの9.6を記録している。

 阿部が担っていた二塁では、ルーキー2人が日替わりで切磋琢磨している。ドラフト2位の村松開人は2週連続でサヨナラ打を放つなど存在感を発揮。同7位の福永裕基はここまで69試合で打率.262と必死に食らいついている。まだともにレギュラーとは言い切れないものの、与えられたチャンスでのアピール合戦が続く。

 さらに現役ドラフトでDeNAから加入した細川成也はチームトップの11本塁打を放って覚醒気配。故障から復帰した4年目“ドラ1”の石川昂弥も9本塁打と生きのいい若手は確かに多い。近年は貧打線と言われて続けてきたが、チーム打率.240はリーグ4位とすこぶる悪いわけでもない。38本塁打も首位阪神と2本しか変わらない。チーム防御率2.93はリーグ2位。しかし、チームは最下位にいる。

アキーノ、アルモンテ…新助っ人が“全滅状態”

 チームの総得点はリーグワーストの「234」。1試合あたり3得点に満たない。打撃指標を見ると、低迷の一因がにじむ。平均的な打者に比べてどれだけ得点を増減させたかを示す「wRAA(weighted Runs Above Average)」は、12球団ワーストの「-42.8」。ヒットは出ても得点につながらない重い現実がのしかかる。

 さらに“真っ向勝負”にもめっぽう弱い。ストレートに対する得点貢献を表す「wFA(Fastball runs above average)」も12球団ワーストの「-29.8」。選手別でみてもチームトップの木下拓哉ですら2.4で、細川は1.3、石川昂は0.0。首位の阪神で見ると、佐藤輝明は12.4、大山悠輔は9.8、近本光司は8.3、中野拓夢は7.1と主力は軒並み高数値。2位のDeNAでも宮崎敏郎が9.0など、しっかり真っ直ぐを打てている。

 もちろん、立浪監督が当初描いていた打線になっていないのも確か。新助っ人のアリスティデス・アキーノ、オルランド・カリステ、出戻りのソイロ・アルモンテは戦力になっておらず、復活が期待されていた高橋周平もスタメンを外れる機会が増えている。ただ、苦しいやりくりの中でもチームは前半戦終了を前にして2カード連続の勝ち越し。若手のさらなる成長が促されれば、巻き返しの機運も高まってくる。

(Full-Count編集部 データ提供:DELTA)

データ提供:DELTA http://deltagraphs.co.jp/
 2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』(https://1point02.jp/)も運営する。

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