反省繰り返した屈辱の2試合…高橋光成、猛暑の中で見つけた“新しい自分”

日本ハム戦に先発した西武・高橋光成【写真:小林靖】
日本ハム戦に先発した西武・高橋光成【写真:小林靖】

9回のマウンドに上がると大歓声「鳥肌がたちました」

■西武 2ー0 日本ハム(17日・ベルーナドーム)

 気象庁によると、群馬県桐生市で16日に今年の全国最高気温を更新する39.7度を観測し、西武の本拠地ベルーナドームのある埼玉県所沢市でも全国3位の39.4度に達した。その中で、西武の高橋光成投手は同日、日本ハム戦に先発して9回4安打に抑え、2020年9月8日のオリックス戦(メットライフドーム=現ベルーナドーム)以来、3年ぶりの完封を達成。チームを今季初の5連勝に導いた。驚異のタフネスはどこから湧き出たのだろうか。

 陽が落ちた後も、蒸し暑さに変わりはなかった。松井稼頭央監督が試合後、「今日は暑かった。ベンチにおっても暑かったもの。選手たちは本当によくやってくれています」と実感を込めて言ったほどだ。

 2-0とリードして迎えた9回の守備。高橋がグラウンドに姿を現すと、スタンドから大歓声が沸き起こった。「鳥肌たちました。また違う力が出て、球速も上がりました」と表情がほころぶ。2死を取り、最後の打者のアリエル・マルティネス捕手をカウント1-2に追い込むと、120球目の渾身のストレートを外角いっぱいに決め、見送り三振。球速はなんと、この日の最速に並ぶ154キロを計測した。

 蒸し風呂のようなマウンド上で、常に顔に細かい汗を浮かべながら力投。味方の攻撃中は、ウオーミングアップのキャッチボールをほとんど行わず、「暑くて体が冷めることもないので、少しでも球数を減らそうということで」と苦笑した。ストレートを軸にしつつ、スライダー、カーブ、フォークなどを駆使し丁寧に緩急をつけた。「今日はすごくいいペース配分だったと思います。強弱をつけて、新しい自分、新しいスタイルという感じでした」と会心の笑みを浮かべて振り返った。

「マイティ・ソーになりたくてここまで来ている」

 前々回登板の1日・ソフトバンク戦では5回4失点。前回の8日・オリックス戦では5回5失点KOを喫し、エースのプライドが傷ついた。屈辱の2試合を含め、4試合連続で高橋とバッテリーを組んだ古賀悠斗捕手は「具体的な内容は明かせませんが、あの2試合の後、2人でよく反省して、ああしておけばよかった、ああするべきだったと話して、今日の試合前もずっと話をしました」と語り、「あの2試合があったからこそ、今日があったんじゃないかと思います」と強くうなずいた。リベンジへの思いが、今年一番の猛暑を上回ったようだ。

 松井監督は「この暑さでしたし、8回と9回は、続投するのかどうか(本人に)確認しましたが、行くと言ってくれた。その気持ちがうれしいし、結果も出してくれましたからね」と称賛。翌17日はオールスター前最後の試合とあって、「お陰で明日は総動員でいけます」と1人で投げ切った高橋に感謝した。

「マイティ・ソーになりたくて、ここまで来ている。切るつもりはありません」。アメリカのスーパーヒーロー映画の主人公をイメージして伸ばした長髪を、この日は頭の後ろで結んで力投した高橋は、いたずらっぽく笑った。まさにスーパーヒーロー級に頼もしい投球だった。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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