優勝争いかき回す“急成長選手” 157キロ守護神、防御率0.90…下位球団に現れた新星
開幕前に日本ハムからロッテへ移籍した西村天裕がブルペンの救世主に
ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の興奮冷めやらぬ中で始まった2023年シーズンもすでに半分以上を消化し、7月17日の試合でいわゆる前半戦が終了した。今回はここまでの戦いで存在感を示したパ・リーグ各チームの選手を、特筆したデータとともに紹介していく。(数字は全て7月17日時点)
リーグ3連覇を目指すオリックスは、前半戦を首位で折り返した。2年連続でリーグトップの防御率を記録した先発投手陣が今季も健在だ。今回はその先発陣の中から、山崎福也投手を取り上げたい。6月には月間防御率2.33で無傷の4勝を挙げるなど、ここまでリーグ3位タイの7勝をマークしている。今季はこれまでやや苦手としていた左打者に対して被打率.208を記録。インコースへの投球を効果的に使い、好結果につなげている。自身初の2ケタ勝利を射程に捉えており、今後も左腕のピッチングに注目してもらいたい。
前半戦を終えて2位につけているロッテ。昨季と比べてリリーフ陣が奮闘しており、6回終了時点でリードしていた試合の勝率は.852から.939に改善している。そんな救援陣の一翼を担っているのが、開幕前に日本ハムからトレードで加入した西村天裕投手だ。開幕から21試合連続無失点の球団新記録をマークするなど、ここまで30登板で防御率0.90と抜群の安定感を見せている。今季の西村投手は主にストレート、スプリット、スライダーの3球種で投球を組み立てており、いずれの球種も被打率は優秀。力強い速球と鋭い変化球のコンビネーションで、ブルペンに必要不可欠な存在となっている。
今季からソフトバンクに加わった近藤健介外野手は、ここまで得点圏打率.400と勝負強い打撃を見せ、リーグ2位の49打点をマーク。現在は3番打者に定着し、柳田悠岐外野手らと強力なクリーンアップを形成している。巧打の印象が強いが、前半戦終了時点でキャリアハイの12本塁打を記録するなど、今季は長打の増加が著しい。カウント別に見ると、追い込まれる前のフライ打球割合が大きく上昇しており、浅いカウントでは打球に角度をつけ、長打を量産していることが分かる。後半戦でも引き続き打線をけん引し、チームを3年ぶりのリーグ優勝に導けるか。
移籍組の当たり年…FA補償選手の田中正義は守護神に定着
楽天の小郷裕哉外野手は、開幕直後こそ持ち前の打棒が鳴りを潜めていたものの、6月6日の試合以降は3番打者に定着。交流戦では打率.311を記録するなど、ブレークの兆しを見せている。小郷に今季見られる変化として、ストレートへの対応が挙げられる。直近2年は打率1割台と苦しんでいた速球を、今季は同.375と捉えているのだ。開幕ダッシュに失敗して下位に沈んでいたチームは、7月に入って8連勝を記録するなど上り調子で前半戦を終えた。後半戦も小郷選手のバットで打線に勢いをつけ、チームを上位に押し上げたい。
前半戦は5位フィニッシュと不本意な成績だった西武。得点数235はリーグワーストで、攻撃の迫力不足が響いた。チーム防御率リーグ3位と投手陣が頑張っているだけに、何とか得点力アップを図りたいところ。カギを握りそうなのは走塁だ。今季はチームスローガンに「走魂」を掲げており、昨季は60だったチーム盗塁数がすでに53であることからも、走塁意識の向上がうかがえる。その象徴的な存在が外崎修汰内野手で、近年減少傾向だった盗塁を積極的に仕掛け、成功率.947は企図10以上の選手の中でリーグトップ。後半戦も快足を飛ばし、多くの得点を生み出せるだろうか。
近藤健介のFA移籍に伴い、今季から日本ハムの一員となった田中正義投手。これまでは故障に苦しみ本来の力を出し切れていなかったが、新天地でそのポテンシャルが開花。前半戦にリーグトップの救援防御率を記録したチームで、クローザーとして君臨している。右腕の最大の武器は最速157キロを誇るストレートで、救援投手では最多の24奪三振をマークするなど球威は抜群だ。最下位からの巻き返しを図るチームとしては、後半戦は1試合でも多くセーブ機会でマウンドに送り出したいところだろう。
(「パ・リーグ インサイト」データスタジアム編集部)
(記事提供:パ・リーグ インサイト)