盟友から「一緒に」 やきとり店から現場復帰…オリ快進撃に貢献も1年で去った背景

元広島・長内孝氏【写真:山口真司】
元広島・長内孝氏【写真:山口真司】

長内孝氏は盟友・森脇浩司氏に誘われ、2014年にオリ打撃コーチを務めた

 現役引退後、広島の打撃コーチを務めた長内孝氏は2005年シーズン限りで退団した。新井貴浩氏(現広島監督)らを育てるなど、指導力には定評があったが、体調問題もあって自ら申し入れた。「次に何をやるかは、まったく考えずに、やめることだけ先に決めた」。現在「本格派 炭焼やきとり処 カープ鳥 おさない」(広島市に2店舗)のオーナーだが、それも心配した周囲に勧められての“転身”だったという。

 カープ選手の名前がついた焼き鳥で知られ、広島県内などに15店舗ある「カープ鳥グループ」。長内氏は広島退団後、アルバイトから修業し、今では2店舗のオーナーとなった。「カープ鳥 おさない」は草津新町の店が「商工センタースタジアム」、観音町の店が「観音スタジアム」で、連日大盛況となっている。「ねぎまが長内。2番人気だけどね。1番人気は秋山で三枚肉しそ巻。新井監督は心臓(ハツ)。チームの中心だからね」。

「商工センタースタジアム」は2006年8月にオープンしたが、長内氏は野球界から離れたわけではない。2012年と2013年は独立リーグの徳島インディゴソックス、2014年はオリックスでコーチを務めた。その間は夫人と長男が店を切り盛り。現在も野球評論家であり、MSH医療専門学校硬式野球部の総合コーチでもある。「コーチは週に2回か3回。バッティングしか見ていないけどね。広島の2軍戦の解説もやっている」と忙しい日々だ。

 2014年のオリックスは、ソフトバンクと激しい優勝争いを展開。10月2日の直接対決で延長10回1-2とサヨナラ負けしてV逸したが、最終成績はゲーム差なし、勝利数はオリックスの方が多かった。長内1軍打撃コーチの功績も大きい。前年4本塁打だったT-岡田は24本塁打と大復活し、チーム打率もリーグ2位にアップさせた。「打撃もぐんぐん伸びてよかったよね」と長内氏は振り返った。

オリコーチは1年で退団…森脇氏には「悪いけど…と、わかってもらった」

 オリックスには当時の森脇浩司監督から誘われて加入した。「徳島でコーチしている時、オリックスが高知でキャンプをやっていた。森脇から『遊びにきてくださいよ』って電話があって、選手を2、3人連れて行った。(元広島の)森脇とは昔から仲が良かったしね。それからまた電話があって『急で悪いんですけど一緒にやってもらえませんか』と言われた」。その年で徳島をやめて広島に帰る予定だったのを変更。家族とカープ鳥グループの社長に相談して、入団を決めた。

「お店のことなどもあって1年でやめさせてもらったけどね。自分の勝手なお願いだったし、森脇には『悪いけど……』と言って、わかってもらった」。長内氏が去った翌2015年、オリックスは低迷した。森脇監督はシーズン途中の6月2日に休養、8月31日付で退任し、シニアアドバイザーになった(2016年10月31日に同職も退任)。「森脇とは今でもずっと付き合いがあるんでね」という長内氏は盟友を手助けできなかったことに申し訳ない気持ちになったそうだ。

 振り返れば、いろんなことがあった。練習を重ねてミスター赤ヘル・山本浩二氏、鉄人・衣笠祥雄氏ともにクリーンアップを打つ主力選手になった。左の長距離砲として優勝にも貢献した。指導者になってからは多くの選手を育てた。そして今も「カープ鳥 おさない」のオーナーであると同時に野球に携わり続けている。プロ1年目は1976年。すっかり体に染みついた長内氏の“カープ魂”は健在だ。

「今、肺の病気になっている。けむりは駄目だから、店には“実戦”では出ないようにしている。ヘルニアも2回手術しているし……。しびれはなくなったけどね」と体調は決して万全ではないが、それこそ現役時代同様、やれることには全力で取り組んでいる。「お店のお客さんに喜んでもらうというのがあるんでね。まぁ、今はカープファンと一緒にテレビで試合を見れればいいかなと思っているよ」と言って笑みを浮かべた。

(山口真司 / Shinji Yamaguchi)

JERAセ・リーグ

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY