失意の西武22歳に手を差し伸べた先輩たち 手術&育成契約も前向き「今年中に支配下に」

西武・牧野翔矢【写真:中戸川知世】
西武・牧野翔矢【写真:中戸川知世】

昨年右肘のTJ手術を受け、育成選手になった西武・牧野翔矢

 西武の牧野翔矢捕手は石川・遊学館高から2018年ドラフト5位で入団し、今季が入団5年目。昨年6月に右肘のトミー・ジョン手術を受け、オフに育成選手となった。今年4月に2軍戦に復帰し、背番号「117」から支配下を目指して汗を流している。

 入団2年目の2020年に右有鈎骨骨折に伴う有鈎骨鉤切除術を受け出場機会を減らした。だが、4年目の2022年には開幕1軍入りし、プロ初出場を果たした。

「森(友哉)さんがいたので、出番は少ないと思っていたのですが、森さんが怪我をしてしまってからは、『出るかも』と緊張していました。初めてなので、失敗もあると思って恐れずに思いっきりやろうと決めていました。1軍のキャッチャーのキャッチングや安定したスローイングを見て、上手いなと思いました。自分はまだまだだと思いました」

 1軍で貴重な経験を積んだが、6月に右肘のトミー・ジョン手術を受け、長期離脱となった。これまでも肩や肘に痛みが出ることはあったが、大手術をすることになるとは想像もしていなかった。

「下半身の使い方が上手くないので、プロに入ってからずっと、上半身で投げてしまっていると言われていました。肘に負担がかかっていたのかもしれません。下半身を使って投げようとは思っていますが、なかなか難しいです」

 手術後は肘が曲がらず、落ち込んだ。痛みもあり「投げられるようになるのかな」という不安な気持ちもあった。だが「やってしまったものは仕方がない。まぁ、大丈夫でしょう」と、気持ちを切り替えた。前向きになることができたのは、気遣って声をかけてくれる先輩たちがいたからだ。

故障離脱中の先輩捕手、岡田雅利と過ごした時間は“財産”に

「エンスはトミー・ジョン手術を経験しているので『ストレッチをやったらいいよ』とジェスチャーで教えてくれました。岸(潤一郎)さんも経験があるので、たくさん質問しました。『大丈夫だよ。最初は心配になるよな』と言ってくれて、本当に支えになりました」

 リハビリ期間中は、左脚の手術から復帰を目指す岡田雅利捕手と過ごす時間が多かった。「『試合見たか?』と話しかけてくれて『あそこはこうかもな』とか『こういう時はこういうのがあるかもね』といろいろ教えてくれました。キャッチャーの勉強になりました」。学年で11違う先輩捕手と過ごした時間は、かけがえのない財産になった。

 2019年のドラフト5位で柘植世那捕手、2021年のドラフト3位で古賀悠斗捕手が入団。さらに、 2021年育成選手ドラフト1位で入団した古市尊捕手が、4月に支配下登録された。だが「自分がしっかり投げられるようになることが一番」と、焦りはない。

「古市は上手ですし、バッティングもいい。支配下になるだろうなと思っていました。ファームにいても、1軍に上がれなかったら育成と同じだと割り切っています。ただ、支配下は結果を出せばすぐに1軍に呼んでもらえる。そういう意味では、自分も今年中に支配下になれたらいいなと思っています」

 正捕手争いに割って入るため、支配下復帰を掴み取ることができるか。自分のペースで冷静に調整を続ける22歳の今後のアピールが楽しみだ。

(篠崎有理枝 / Yurie Shinozaki)

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