高校野球で強豪の敗退が相次ぐ理由 花巻東の名将も「難しい…」新ルールへの適応

岩手大会を制した花巻東【写真:羽鳥慶太】
岩手大会を制した花巻東【写真:羽鳥慶太】

各地で強豪校が敗退…カギを握る「10回からタイブレーク」

 第105回全国高校野球選手権は各都道府県大会が行われ、甲子園に出場する学校が続々と決まりつつある。一方で目立つのが、昨秋や今春に各地区で好成績を残した強豪校の敗退。一つの理由として、今年から運用されるようになった「延長10回からのタイブレーク」がありそうだ。

 タイブレークは試合の進行を促進するルールで、特定のイニングから走者を置いてイニングがスタートする。高校野球では2018年の導入から昨年まで、延長13回からの適用だったのが、選手の肩肘の保護を目的に今年から延長に入ると同時に適用されるようになった。そして今夏、東東京大会では春の選抜にも出場した二松学舎大付、春の都大会で準優勝した関東一といった学校がタイブレークの末に敗れ、大会が佳境を迎える前に姿を消した。

 26日に決勝が行われた岩手では、花巻東が2019年以来4年ぶりの夏の甲子園出場を決めた。ただここでも、道のりは平坦ではなかった。水沢商との3回戦は、2点の先行を許した。なんとか2-2の同点に追いつき延長へ。11回タイブレークの結果、ようやく5-2で振り切るという展開だった。

 花巻東の佐々木洋監督は、大谷翔平(エンゼルス)や菊池雄星(ブルージェイズ)をプロに送り出し、2009年春の選抜では準優勝の実績がある監督。その名将をして「難しいですね……」と口にするのが、この10回タイブレークの戦い方だ。

延長突入いきなりの適用で「わからなくなった」

「適用が早くなったことで、勝敗は本当にわからなくなりました。力関係というものがなくなった気すらします」

 どういうことかといえば、これまでは通常イニングで進むのが長ければ長いほど、いわゆる強豪私学の方が有利な面があったのだという。高いレベルの投手を多く揃えているためだ。

「そこがフラットになった。戦い方に焦りが出るようにもなった」というのだ。

 タイブレークを生き残った花巻東は盛岡誠桜との準々決勝では先制を許し、盛岡一との準決勝でも一時は3-4と逆転を許す場面があった。そんな時も佐々木監督は「水沢商との試合で一度負けたつもりでやれ」とナインに語りかけた。

 今年のチームを佐々木監督は「強いチームとは思っていませんが、負けないチームにはなってきたのかな」と評する。延長即タイブレークの戦いを、一度経験したことも大きそうだ。甲子園でもこのルールが嵐を起こす場面がありそうだ。

(羽鳥慶太 / Keita Hatori)

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