なぜ西武新助っ人は日本で打球失速? 原因判明で開眼…理解した“日米の違い”
今季全試合に出場し打率、安打、本塁打、打点で“チーム4冠”
■西武 5ー3 ロッテ(26日・ベルーナドーム)
来日1年目の西武のデビッド・マキノン内野手は26日、本拠地ベルーナドームで行われたロッテ戦に「4番・一塁」で出場し、11号2ランを含め4打数2安打2打点と躍動した。同日現在、今季チームでただひとり全87試合に出場。5月上旬に2割前半に落ち込むこともあった打率が、.262まで上昇しているのをはじめ、85安打11本塁打33打点と4部門全てでチームトップの成績を叩き出している。中村剛也内野手が「特例2023」の対象選手として21日に戦列を離れた後、“代役”の4番として輝きを放っている。
2-1と1点リードして迎えた6回1死二塁の好機に、ロッテ先発・美馬学投手の初球のシュート(マキノンは似た軌道の「ツーシーム」と認識)を一閃。打球は左中間席に飛び込み、勝利を引き寄せた。マキノンが放つ飛球はこれまで、フェンス際で失速する傾向が強く、本人も「ノーパワー」と嘆くことしきりだったが、ここにきて殻を破りつつある。
「アメリカのボールは硬くて飛ぶイメージだったけれど、日本のボールはフライを打つと飛ばない。その代わり、ライナーは伸びる。それがわかってきたよ」とうなずく。日本の投手陣の投球にも慣れてきたようで、「アメリカの投手のツーシームは沈むが、日本の投手のツーシームは横滑りする。アメリカでは沈む球が多かったから、バットを下からすくい上げていたけれど、日本の投手の球が横滑りしてくるとわかったので、最近はバットを立てて、しっかり叩くことを心がけている。それがうまくいっている」と理詰めで説明した。
日本のボールの打ち方を会得しつつある助っ人を、松井稼頭央監督は「コンタクト率が高い(空振りが少ない)し、勝負強さを含めて、チームにとって大きな存在です。何より試合に出続けてくれていることが大きい」と称賛する。「守備も、“元キーパー”だけあって反応が見事ですね」とニヤリと笑いながら付け加えた。
華麗な守備は「サッカーのGKの経験が反応速度につながっている」
と言うのも、一塁と三塁を守るマキノンは、連日華麗な守備を披露。前日25日も、ロッテのグレゴリー・ポランコ外野手が一、二塁間へ放った強烈なライナーをダイビングキャッチし、スタンドを沸かせた。高校、大学時代は春と夏に野球、秋と冬にはGK(ゴールキーパー)としてサッカーに打ち込んでいたそうで、「GKの経験が反応速度につながっているのかもしれないね」と自信満々だ。
4番が板につき始めたが、マキノン自身は「自分は典型的な4番打者ではない。自分を客観的に見れば、2番、3番、5番あたりを打つ打者かなと思う」と冷静に分析している。「僕のシーズン本塁打数は10~15本。(楽天の)浅村(栄斗)選手、(巨人の)岡本(和真)選手はすでに20本以上打っていて、最終的に30~40本打つだろうから、そういう打者が本来の4番だと思う。僕はどちらかと言うと、野手の間を抜いてヒットを打ったり、三振をせずに四球で出塁するところが長所だから」とここでも理詰めだ。
その上で「ウチでは中村さんが本来の4番だと思う。彼が戻ってくるまではなんとか4番を打って、チームを引っ張っていけたらと思います」と殊勝な姿勢を示す。今月10日から22日まで今季最長の7連勝を飾るなど、浮上を始めた西武にとって、いまや欠かすことのできない中心選手である。