大谷とジャッジのMVP争いは「4、5年続く」 米記者も瞠目…時代を彩るライバル関係

ヤンキースのアーロン・ジャッジ(左)とエンゼルス・大谷翔平【写真:Getty Images】
ヤンキースのアーロン・ジャッジ(左)とエンゼルス・大谷翔平【写真:Getty Images】

2021年は大谷が満票MVP、昨季はジャッジがMVPも大谷が満票阻止

 例えば、1940年代のジョー・ディマジオvsテッド・ウィリアムズであったり、1950年代のウィリー・メイズとミッキー・マントルであったり。少し前で言えば、マイク・トラウトvsブライス・ハーパーであったり……メジャーの歴史は時代を象徴する偉大なるライバル関係で彩られてきた。そして今、2020年代にファンを魅了してやまないライバルと言えば、エンゼルスの大谷翔平投手vsヤンキースのアーロン・ジャッジ外野手ではないだろうか。

 大谷はトミー・ジョン手術(右肘内側側副靱帯再建術)から完全復活を果たした2021年に、打者として打率.257、46本塁打、100打点、OPS.965、26盗塁、投手として23先発、9勝2敗、防御率3.18、156奪三振の成績を挙げ、満場一致でア・リーグMVPに輝いた。一方、故障がちだったが4年ぶりに健康なシーズンを送ったジャッジは、ブラディミール・ゲレーロJr.、マーカス・セミエンに続く4位となった。

 2022年は、157試合に出場したジャッジのバットが火を噴き、ア・リーグ最多となる62本塁打の新記録。打率.311、131打点で打撃3冠こそ逃したものの、1位28票、2位2票の“ほぼ満票”でア・リーグMVPに選出された。そして、その満票を阻止する1位2票を獲得し、2位となったのが15勝&34本塁打と投打で好成績を残した大谷だった。MVPはジャッジなのか、大谷なのか――。シーズン半ばから“ジャッジvs大谷論争”がメディアやファンを賑わせたことは記憶に新しい。

 両者が好スタートを切った今季はシーズン序盤から論争が再燃したが、ジャッジが今季19号を放った6月3日(日本時間4日)の守備中に右足親指を負傷。7月28日(同29日)に戦列復帰するまでの間、歴史的な打撃成績を挙げた大谷に大きく水をあけられる形となった。

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NY紙「Newsday」でヤンキース番を務めるエリック・ボランド記者【写真:編集部】
NY紙「Newsday」でヤンキース番を務めるエリック・ボランド記者【写真:編集部】

今季もしジャッジが負傷していなければ…「写真判定くらいの接戦に」

 だが、「この先、4、5年は2人のMVP論争が続くのではないか」と考える人がいる。NY紙「Newsday」でヤンキース取材歴15年を誇るベテラン記者、エリック・ボランド氏だ。昨季を例にとりながら、大谷vsジャッジのライバル関係はしばらくメジャーを賑わせそうだと話す。「2人はリーグを代表するダイナミックな選手だから」と――。

「ご存じの通り、2人はここ2年、激しいMVP争いを演じている。昨季62本塁打を放ったジャッジを相手に、大谷はMVP争いを実に興味深いものにできた唯一の人物。長らく破られなかった記録を更新したジャッジに投票するのは比較的簡単な選択ではあったけれど、大谷の成績は投票資格を持つ人に少なくとも熟考する材料を与えてくれた。実は 私も昨季投票権を持っていた1人。彼の投打両面での成績は一つ一つじっくり検討してみたくなるくらい素晴らしいものだった」

 今季ジャッジが負傷した6月3日時点の成績を比べてみよう。ジャッジは49試合に出場して打率.291、19本塁打、41打点、3盗塁、OPS1.078。大谷の打撃成績は58試合で打率.274、15本塁打、40打点、7盗塁、OPS.888で、投手成績は12試合で5勝2敗、防御率3.17、86奪三振、WHIP1.00となっている。ジャッジが不在だった約2か月間で、大谷は打率.302、39本塁打、81打点、12盗塁、OPS1.083に加え、20先発で9勝5敗、防御率3.43、156奪三振、WHIP1.07と大きく成績を伸ばした(7月30日終了現在)。

 ボランド記者は「現時点では今季のMVPは大谷が満票で受賞するだろう。誰が投票権を持っているか分からないが、私は大谷以外には考えられない」と断言。同時に「もしジャッジが怪我をしていなければ、攻守にわたり素晴らしいスタートを切っていたから、大谷とのMVP争いは写真判定くらいの接戦が期待できたかもしれない。それこそ昨季のようにどちらがMVPに相応しいか、シーズンを通じて議論される話題になっていただろう」と、前年にも増す激戦となっていただろうと予測する。

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ベテラン米記者が享受する「目撃できる栄誉」

 論争が繰り返されるということは、言い換えれば、MVPの投票権を持つBBWAA(全米野球記者協会)の30人の記者にとっては“悩みの種”でもある。もちろん、いい意味での“頭の痛い話では”あるが。「まさにその通り」と悩ましげながら、どこか嬉しそうな表情を浮かべるボランド記者は「私たちは素晴らしい特権に恵まれていると思うんだ」と話を続けた。

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「ヤンキース担当だからヤンキース戦でしか大谷のプレーを直接見ることはできないが、それでもベーブ・ルース以来100年以上も登場しなかった二刀流をハイレベルで成し遂げる姿を目撃できることを栄誉に思う。同時に、ジャッジが昨季ア・リーグでは誰も到達しなかった62本塁打を記録する姿も目に焼き付ける特権に恵まれた。彼ら2人はスペシャル、かつ唯一無二の才能の持ち主だから」

 約2か月の戦線離脱で遅れを取ることになったが、ジャッジは復帰2戦目の7月29日(同30日)オリオールズ戦で3回に今季20号となる逆転2ランをセンター深くに運び、復活の狼煙を上げた。同じ日、大谷はブルージェイズ戦で二塁打を放ったが、好機に2打席連続で申告敬遠され、敵地にもかかわらず大きなブーイングが発生。それぞれがそれぞれの形で存在感を示したことは興味深い。

 ジャッジはこれまで大谷について「ライバルではなく友人。仲間の1人として切磋琢磨するのを楽しんでいるし、彼のファンでもあるんだ」と話している。一方の大谷は、今年の球宴前にジャッジの62本塁打という記録について問われると「塗り替えたいなっていう気持ちはもちろんあります」と答えた。周囲が騒ぎ立てるような剥き出しのライバル心こそ見せないが、互いを意識し、リスペクトしあっていることは間違いないだろう。

 大谷翔平、29歳。アーロン・ジャッジ、31歳。2020年代を彩るライバル関係という名の高め合いは、今後どんな展開を見せるのか。球史に残るハイレベルな争いを期待しよう。

■NY紙「Newsday」のエリック・ボランド記者のインタビュー動画はこちら
https://abema.tv/video/episode/239-205_s70_p112

(佐藤直子 / Naoko Sato)

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