原監督絶賛「他の投手も見習うべき」 纏う“エースのオーラ”…戸郷が制した9回の勝負

巨人・戸郷翔征【写真:中戸川知世】
巨人・戸郷翔征【写真:中戸川知世】

「行かせてください」8回終了時点127球も志願の続投

■巨人 2ー1 ヤクルト(3日・東京ドーム)

“エースのオーラ”を纏い始めた。巨人の戸郷翔征投手は3日、本拠地・東京ドームで行われたヤクルト戦に先発し、自己最多149球を要しながら、9回1失点完投で10勝目(2敗)を挙げ、セ・リーグの今季2桁勝利一番乗りを果たした。原辰徳監督が「ジャイアンツの他の投手陣にも見習ってほしい」と激賞するほどの熱投だった。

 8回を投げ終えた時点で、投球数は既に127に上っていたが、戸郷にマウンドを降りる気はさらさらなかった。スコアは1-1の同点。その裏の味方の攻撃中、阿波野秀幸投手チーフコーチに続投を志願したちょうどその時、4番・岡本和真内野手の勝ち越しソロが飛び出した。「『点が入っても入らなくても、9回は行かせてください』と言った途端、和真さんがホームランを打ってくれました。最高でした」と声を弾ませた。

 もっとも、圧倒したのはここからだった。1点リードの9回のマウンドで、先頭の塩見泰隆外野手に右前打、村上宗隆内野手に四球を許し、無死一、二塁のピンチ。強打者ドミンゴ・サンタナ外野手を打席に迎えた。「しびれました。なんとか1つアウトを、三振で取ることを意識しました」と心に決めた通り、外角低めギリギリに150キロの速球を3球続け、1度もバットを振らせないまま3球三振に斬って取ったのである。原監督は「ピッチャーが普段一番練習しているのが、アウトローの真っすぐだと思う。それをああいう場面で投げ込めるというのは、並ではない。他の投手も見習うべきところがあると思いますよ」と絶賛した。

 最大の難関を乗り越えた戸郷は、続く代打・青木宣親外野手を二ゴロ、宮本丈内野手を左飛に打ち取り、勝ち切った。最後の149球目も150キロを計測していたのだから恐れ入る。「今日は最後まで球速が落ちず、150キロを連発できた。あんなに球速が出たのは何年ぶりか、というくらい状態がよかった。僕自身、要因は理解できていません」と少し戸惑いつつ、「状態がいい時にはあれくらいの投球ができると再確認できたので、ああいう状態に毎試合もっていけるように頑張りたいです」と自信を深めた。

勝利数、完投数、投球回でリーグトップのタフネス

 昨季の12勝に続き、2年連続で2桁勝利に到達し、最多勝争いで単独トップに浮上。3完投、115投球回もリーグトップ(3日現在)というタフネスぶりだ。戸郷は「責任がありますし、中継ぎの方を休ませられることが一番」と先発ローテの軸としての責任感を強調する。一方で「投げすぎて壊れてしまったら意味がない。メンテナンスをしっかりできていることが、これだけ球数を投げられている理由だと思いますし、裏方さんやトレーナーの皆さんに感謝したいです」と言い添えた。

 今季から戸郷を投手キャプテンに任命した原監督は「徐々にリーダー意識を持ちながら、やってくれている」。さらに「打席においても、1人のバッターとして攻撃性が強い。チームの中でいいお手本になっている」と評する通り、打席でも手を抜かず、隙あらば塁に出ようという意識が濃厚にうかがえる。今季打率.129(31打数4安打)、3打点4犠打1犠飛をマークしており、他の投手の刺激になっている。

 高卒5年目、23歳にして漂い始めた風格。通算119勝を誇る33歳の菅野智之投手も健在だが、戸郷の成績、立ち居振る舞いもまた、エースと呼ぶに十分ふさわしい。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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