1割打者を先発起用、主力をべンチスタート 広島3連覇指揮官が見る新井監督の思惑
緒方孝市元監督が双方向動画配信サービス「カープ県」でファンに解説
首位・阪神を必死に追いかける広島は、全員野球で暑い夏を乗り越えようとしている。1日からの本拠地6連戦を終えた。3日のDeNA戦(マツダ)では延長12回、0-0の“死闘”もあった。5日の巨人戦(同)では見事な逆転サヨナラ勝利。3日は9回無失点だった先発・床田の後を矢崎、島内、栗林が無失点継投で凌いだ。一方の打線は10イニングを投げた先発のバウアーをはじめ、DeNA投手陣を打ち崩せず。再三のチャンスがあった分、課題は残った。しかし、収穫が全くなかったわけではない。8月を乗り切るための意図は見えた。
打順は3番に秋山が固定されている。前を打つ野間も勝負強く、後半戦はほとんど2番で起用されている。西川が離脱後、“つなぎの4番”として上本が起用され、その後ろに強打の捕手・坂倉が控える。遊撃の小園も毎試合スタメン出場を続けている。ただ、その他は若手とベテランを使い分けている印象だ。3日の試合では羽月を二塁に、矢野を遊撃で起用。打率1割台の2人をスタメン起用した。
球界屈指の好投手・バウアーを相手でのこの並びに疑問を持ったファンも多かった。羽月は3打席、矢野は4打席に立ち、無安打に終わった。羽月はベテランの菊池と途中で交代した。この日、インターネットでの双方向動画配信サービス「カープ県」でファンに解説していた緒方孝市氏は、このポイントについて触れたが、悲観的な意見ではなかった。
緒方氏は羽月や矢野の打撃に課題があることは重々、承知の上で「経験してもらわないと選手は伸びていかない。先を見た新井監督の采配なんです」と説明。シーズンで優勝するにはそのための“体力”が必要と言われる。熾烈な優勝争いを経て、頂点に立った監督やコーチ、選手が得ることのできる“経験”を指すことが多いが、広島3連覇の指揮官だった緒方氏からすると「それは選手層なんですよ」と独自の観点で解説する。
特に広島の場合、蒸し暑い夏を屋外で戦うケースが多いため、体力的な心配もある。「シーズンは9人では戦えないんです。2軍から先発投手を上げてくることもあるし、中継ぎもそう。選手にいつアクシデントが出るかもわからない。不調の選手だって出てくる。ベテランの監督ならわかっていると思いますが、大きな戦力ダウンをしないように対処していかないといけないんです」とこの時期、采配を振るう上で最も避けないといけないことを明かした。
23歳の羽月、24歳の矢野に求めること…菊池、丸、田中、鈴木誠也も歩んだ道のり
スコアレスドローに終わった試合で、カープはバウアーの前に大きなチャンスを作れなかった。プレーボール時のベンチには松山や菊池ら主力がいた。だが、新井監督は若手を起用し、ベテランの体力を温存した。「若い頃に経験しないとわからないことがあります。次第に調整の仕方や準備も理解をしてくる。菊池や丸、(田中)広輔、(鈴木)誠也……みんなそうだったんだから。暑い夏を乗り越えてパフォーマンスを発揮してくれるようになった」と3連覇の原動力となったメンバーの名を並べた。
緒方氏は他にもベンチスタートから好結果を出すこともあった「安部友裕、松山、エルドレッドもいたからね。その中で元気や体力を温存することもできた」と回想。一戦も落とせない戦いが始まる中で、5連戦または6連戦を「経験」「休息」、そして「勝負」のラインナップをどのように組んでいくかが重要と説明した。5日の松山のサヨナラ打も打った本人も見事だが、ベンチワークの良さも見逃せない。
確かに打力に劣る打順になることがあるかもしれない。勝ち試合を見に球場へ足を運んだファンの方が疑問を持つスタメンが並ぶこともあるとは思う。「主力として戦う菊池だって最初は守備と肩だけで試合に出ていた。打力は期待できなかったわけですから」と緒方氏は当時を振り返った。常勝チームを作る上での成長過程だと感じながら、見守っていく“勧め”を解説に添えて、ファンに伝えていた。
(Full-Count編集部)