台湾U-12代表が海を越えてきた理由… 留学生も魅了する甲子園の“存在意義”

高知中央が川之江に9-4で勝利した
高知中央が川之江に9-4で勝利した

台湾からの留学生・謝が5打数3安打4打点で甲子園初勝利に貢献

 台湾からの留学生が躍動した。7日に行われた第105回全国高校野球選手権の大会2日目第2試合、高知県大会で明徳義塾や高知などの強豪を下して甲子園初出場を果たした高知中央が、川之江(愛媛)に9-4で勝利した。打線を勢い付けたのは、台湾出身の1番・謝喬恩(しゃ・ちゃおえん)外野手(2年)。中越え二塁打を含む5打数3安打4打点を放ち、左翼守備でも、最終回に50メートル6.2秒の俊足を活かして27個目のアウトをつかんだ。

「最後は捕れて安心しました。甲子園に出たら応援に来ると言っていた両親の前で勝ててうれしい」と安堵の表情。中平国小2年のときに野球を始め、小柄ながら強肩を活かして二塁手として台湾U-12代表入り。卒業後に進学した台湾の強豪・新明国中では全国制覇を経験している。

 台湾の頂点を極めた謝が、次に憧れを抱いた先は、海の向こうにある“高校野球の聖地”だった。じっくりと両親と相談して高知中央への進学を決意。「日本の監督は厳しい。けど、楽しい! 台湾と違って挨拶もするし、何事もいつも全力。(入学した頃は)しんどかった」。ウエートトレーニングや夜の自主練習も行い、この1年間で13キロの体重増加につなげ、打撃力も身に付けた。初めての甲子園は「人が多かったけど、試合に集中していいバッティングができました」と聖地を満喫した。

 1年時には内野手として背番号5を背負ったが、左翼手へコンバートされてからは思い入れのある数字を貫いている。「好きな数字は『13』。小学校と中学校での出席番号が13だったからです」と、日本の高校野球では珍しい背番号の選び方も明かした。

日本で球児が伸びる理由は「甲子園という明確な目標」

 5日に台湾から来日し、応援に駆け付けた両親は、「台湾の学生球界は、年を重ねるごとに進学先の選択肢が減る上に、野球一辺倒になりがちです。外の世界を知り、野球だけでなく外国語(日本語や英語)の勉強もすることは、本人の将来のためになる」と、日本への留学の意義を説明した。

 同じく台湾出身の高知中央OBで、日本の高校球界への挑戦を後押しする事業を展開する晁菘徽(ちゃお・そんふい)氏は、謝の成長理由を「甲子園という明確な目標ができたから」と説明する。「台湾では大会の数が多いので負けても次があります。最後の1球に懸けるという日本独自の様式、最後の目標になる甲子園に等しい舞台は、台湾にはありません。台湾にいたときの謝は、細くて力がなく、高知中央で3年間頑張れるだろうかと心配していたくらいでした。でも、日本(の高校野球)では甲子園が最後(の目標)。最終目標を持つことで逞しくなれたのだと思います」と推察した。

 憧れの甲子園での一戦を終えて、多くの報道陣に囲まれた謝は「(囲み取材について)知りませんでした。恥ずかしいです」と顔を赤らめながら、勉強中の日本語を使って取材に応じた。2回戦へ向けて「次の目標ができました。次の試合にも勝ちたいです」と言葉に力を込めた。

(喜岡桜 / Sakura Kioka)

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