主砲が直訴「このままでは勝てない」 “初勝利”の履正社…暗雲晴らした空前の実戦経験

履正社・多田晃監督【写真:川村虎大】
履正社・多田晃監督【写真:川村虎大】

主砲の初回先制3ランで弾み…多田監督は春夏通して甲子園初勝利

 投打が噛み合い、2019年以来の全国制覇へ好発進だ。第105回全国高等学校野球選手権大会は7日、大会2日目の4試合が行われ、第2試合では春夏連続出場の履正社(大阪)が鳥取商(鳥取)に6-0で完封勝利を挙げた。2022年4月から指揮を執る多田晃監督にとっては、甲子園2戦目にして初白星。「みんなで勝ち取った1勝だと思います」と頬を緩めた。

 公式戦初の4番に座った森田大翔内野手(3年)の一振りが勝敗を決した。初回1死一、二塁の場面で、相手投手が投じた3球目を捉えて左越え3ラン。地方大会7試合で3本塁打を放っている大砲の一発を、指揮官は「大阪大会から調子が良くて、なんとか初回から点を取りに行こうと話していたので、本当にうれしいホームランでした」と振り返った。

 高知に逆転負けを喫した今春の選抜大会後、森田は「今のままでは勝てないと思います」と指揮官へ直訴。練習メニューの見直し、意識改革の必要性などを1時間半に渡って2人きりで話し合った。「じゃあ、こういう練習しようかとか、ここ変えていこうかを話しました。チーム全体の話を」と多田監督。これまでチームをまとめていた主将の森澤拓海内野手(3年)と副主将の坂根葉矢斗捕手(3年)に加え、森田がリーダーシップを発揮し始めたことで、「日本一」の目標へ向けてチームがさらに引き締まった。

 同校を35年間率いた前監督・岡田龍生氏(現・東洋大姫路監督)在籍時から大事にしている「選手とのコミュニケーション」を、岡田氏が退任後も引き継ぎ、さらに深く選手の声に耳を傾けているという多田監督。6月には坂根から「(練習試合を)外の球場でしたい」との要望を受け、これまでにないほどの頻度で実戦をこなした。

環境を変えた実戦で培った自信「週に4試合から5試合」

「『それやったらよっしゃ、行くぞ!』って球場をとりまくって、バスで一緒に遠征です。授業が終わったらバスに乗って、試合して、帰ってきたら夜の9時や9時半。あんなに(練習試合を)したのは初めてです。平日にも2、3回入れたので、週に4試合から5試合している感覚でした。皇子山球場(滋賀県)へ行ったり、春日スタジアム(兵庫県)へ行ったり。(大阪大会会場の)舞洲球場も豊中ローズ球場なんかも行きましたし、強豪校ともたくさんやらせていただいた」

 校内の野球部専用グラウンドから飛び出し、いつもと違う環境下で実戦を積んだことが自信になり、以前より堂々としたプレーでノーシードからの大阪大会制覇、甲子園1勝につなげることができた。甲子園でも指揮官と選手で密にコミュニケーションをとり、頂点へと勝ち進む。

(喜岡桜 / Sakura Kioka)

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