「こっちの方がいい」とゴロをキック 海外で学んだ“超合理的野球”で甲子園初勝利

堤尚彦監督率いるおかやま山陽が逆転勝利
堤尚彦監督率いるおかやま山陽が逆転勝利

3か国でオリンピック予選に挑戦した“異色経歴”の監督が甲子園初勝利

 異色の経歴を持つ指揮官が甲子園初白星を挙げた。阪神甲子園球場で行われている第105回全国高等学校野球選手権大会は8日、大会3日目の4試合が行われた。第3試合では、ジンバブエ代表監督として東京五輪予選へ出場した堤尚彦監督率いるおかやま山陽(岡山)が9-2で日大山形(山形)に逆転勝利。春夏合わせて3度目の甲子園で掴んだ初勝利に「(学校創立)100周年で卒業生たちもみんな楽しみにしていたので、その期待に応えられたことの方が嬉しい」と笑顔を見せた。

 野球不毛の地で得た経験が実を結んだ。青年海外協力隊の一員として東北福祉大卒業後にジンバブエへ。大学院卒業後にガーナへ向かい、現地の子どもたちへ野球を指導した経験を持つ指揮官。ゴロを捕球せずにインサイドキックで送球したり、バットを左右逆手で握るガーナの子どもたちに驚いたが、「だって、こっちの方がいいんだもん」と迷いなく答える姿に「自分たちが思っていることはほとんど先入観と固定観念」と気付かされた。

 帰国後はスポーツマネジメント会社勤務、インドネシア代表チームのコーチを経て、2006年に同校の監督へ着任。高校野球の指導に携わる傍ら、ガーナ代表チームのコーチ、ジンバブエ代表監督としてオリンピック予選を戦った国際経験豊富な監督だ。同校では独創的な練習方法や道具の導入と「甲子園ではなく野球を愛せ」など66か条からなる部訓を掲げ、2017年夏に甲子園初出場を果たしている。

堤監督が持ち込んだ「甲子園3勝」を叶える秘密道具とは

 今夏は“三種の神器”を持って甲子園入り。まずは『テニスボール』だ。大切な試合前にジャベリングをすることで周辺視野を研ぎ澄まし、縦3段に積み重ねることで集中力を高められるという。主将の渡辺颯人内野手(3年)は「いつものルーティンができたので落ち着いて試合をすることができました」と語った。

 次に、エースの井川駿投手(3年)が「呼吸が整うことでリラックスすることができます」という“吹き戻し”。屋台などで配られるものと比較すると伸び縮みする箇所が硬く、腹筋に力が入ることで気持ちが落ち着くという。さらに宿舎には『畳』が6枚ほど搬入されている。素足で畳の上に立って素振りを行い、練習場所になっている球場へ運び出して使っている。常識に捉われない練習法で、目標の「甲子園3勝」へ突き進む。

(喜岡桜 / Sakura Kioka)

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