呆然とした指揮官に無言のロッカー 悪夢7連敗のエ軍に正念場…遠のく大谷との再契約

ジャイアンツ戦に「2番・指名打者」で先発出場したエンゼルス・大谷翔平【写真:ロイター】
ジャイアンツ戦に「2番・指名打者」で先発出場したエンゼルス・大谷翔平【写真:ロイター】

9回に6失点、まさかの逆転負けで7連敗…ワイルドカード進出圏内から8ゲーム差に

■ジャイアンツ 8ー3 エンゼルス(日本時間8日・アナハイム)

 クラブハウスには連日、重苦しい空気が流れている。大谷翔平投手の所属するエンゼルスは7日(日本時間8日)に本拠地で行われたジャイアンツ戦に敗れ、今季ワーストの7連敗。ワイルドカード進出圏内から8ゲーム差に広がった。誰も言葉を発さない、静かなロッカールーム。取材に応じた選手の声だけが響き渡った。

 悪い流れを断ち切ることはできなかった。1点リードの9回。登板した守護神カルロス・エステベス投手が失点を重ねた。2本の適時打を浴び、1死しか奪えず5失点で降板した。代わったアーロン・ループ投手も打ち込まれ、9回に計6失点。本拠地はファンの悲鳴とため息が入り混じった。

 試合後、フィル・ネビン監督はどこか呆然としていた。机を叩き怒りをあらわにするなど感情的だった前日6日(同7日)のマリナーズ戦後とは全く違う雰囲気だった。これまでは負けが込んでも「諦めていない」と強気の姿勢を崩さなかったが、この日は「寝て、明日も戦うだけだ。前言ったことと、同じだ」「負けることは辛い」。言葉に力はなく、目は泳ぎ、口数も少なかった。

 エンゼルスは今年、大谷をトレードせず買い手に回った。期限間際にエドガー・クエロ捕手やカイ・ブッシュ投手ら多くの有望株を放出し、ルーカス・ジオリト投手、CJ・クロン内野手やランダル・グリチック外野手らを獲得。ポストシーズン進出へ“本気の補強”の裏には、今オフFAになる大谷と何としても再契約したい――。そんな強い思いが見える。

試合前にはチームメートとファンサービスも…にじむ勝利への思い

 本拠地エンゼルスタジアムでは、背番号「17」のユニホームを着た多くのファンがいるが、それ以上に日本企業の多さに、大谷の絶大な影響力を感じさせられる。トヨタ、ヨコハマタイヤ、バンダイナムコ……。数々の“見たことある”看板が並ぶ。再契約には6億ドル〜7億ドル(約860億円〜1000億円)が必要とも言われているが、それに見合う影響力が大谷にはあると球団が考えるのも頷ける。

 大谷はトレード期限が迫った7月下旬。「このチームでプレーオフに行きたい、勝ちたいという気持ちは変わらない」とエンゼルスへの熱い気持ちを語っていた。この日も、試合前にはエステベス、ハイメ・バリア投手、水原一平通訳らとファンに向け“ボール投入合戦”を行うなど、チームメートとも良好な関係を築き、勝ちたい気持ちは強く伝わってくる。

 一方で、2021年の最終戦登板後には「ヒリヒリする9月を過ごしたい」とぶっちゃけ発言をしたように、勝てないチームへ悔しい思いも強い。この日の敗戦で7連敗を喫し、ワイルドカードでの進出が絶望的に。3日(同4日)の試合後には、涙を浮かべる姿もあった。

 大谷が勝利を渇望しているのはチームメートもわかっている。マイク・トラウト外野手は以前、再契約は「金額じゃない。勝たなきゃいけない」と話していた。プロスペクトを多数放出し、“覚悟”を決めたエンゼルス。来季以降のためにも何としても勝ち続けなければいけない。

(川村虎大 / Kodai Kawamura)

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