プロ注目の星稜右腕が感じた高校生活の“悔い” 大舞台での5四球「崩れすぎた」
最速149キロ右腕・武内は1回1/3を投げて無念の5四球降板
2019年夏に準優勝した名門が、2年連続で初戦で姿を消した。第105回全国高等学校野球選手権大会が10日、阪神甲子園球場で行われ、大会5日目第3試合は星稜(石川)が創成館(長崎)に3-6で破れた。「5番・投手」としてチームの大黒柱を担ったプロ注目の最速149キロ右腕・武内涼太投手(3年)は、最終回に逆風を切り裂く左中間2ランを放つも、反撃及ばず、「エースである自分が崩れすぎたのが一番の敗因だと思います」と唇を噛んだ。
立ち上がりの不安定さが勝敗を分けた。先発マウンドに立った武内は、初回に先頭打者を四球で歩かせると、後続の安打や四球などで二死満塁のピンチに。「フォアボールが(2つも)出たんで、(ストライクゾーンへ)入れよう、入れようという焦りがあった」と平常心を欠き、押し出し四球と暴投の間に生還を許して、この回に2点を献上した。
1回1/3を投げて2三振を奪うも5四球と制球が安定せず、「小手先だけじゃ通用しないということを痛感したというか。(練習を)長い年月やり込んだ人がこの甲子園の舞台で活躍できますし、自分ではこの代になって頑張ったつもりですけど、その前の年だったりが甘かったんだと思います」と、入学時からの過ごし方にも悔いを残した。
今年4月に就任した山下智将監督「優勝したかった」
4年前に準優勝へ導いた当時のエース・奥川恭伸投手(ヤクルト)に憧れて、同校へ入学した武内。「星稜はバッティングのチームじゃなく、守備」と、最少失点に抑えて主導権を握ることができるゲームメーカーを目指した。奥川の投球動画を参考にするなど熱心に研修したが、「奥川さんが投げたら3失点以内には絶対終わるから、バッター陣は3点、4点以上取ればいいって気持になれるんですけど、野手には僕が何点取られるか分からない状況だった。安心感というか。それが僕にはなかった」と、名門のエースとして“あるべき姿”になれず、肩を落とした。
同校を強豪に育て上げた元監督・山下智茂氏の長男で、今年4月に部長兼監督代理から新指揮官へ就任した山下智将監督も、「(武内で)もっといきたかった、正直。立ち上がりが悪い子なんで、(初戦で)なんとかきっかけを掴んで、本人の自信になったらなと。やっぱり優勝したかった」と悔しさを滲ませた。
今後の進路について「こんな内容だったので(プロ志望届提出か大学進学か)山下監督と話し合います」と明言せず。自信を失った様子の武内について「奥川の方が気持ちの面で言えば、前の日に寝られないとか、トイレから出てこないとか(行動に現れていた)。そのあたり彼の方がチームに言い声を出してくれたり、ありましたんでね。彼も彼のよさ、奥川は奥川のよさがあった」と指揮官。甲子園まで導いた右腕がこの敗戦を機に、さらに成長できるよう期待を寄せた。
(喜岡桜 / Sakura Kioka)