佐々木麟太郎が“神業”に感謝 1時間半の中断が勝負の分かれ目「リセットできた」

花巻東・佐々木麟太郎【写真:羽鳥慶太】
花巻東・佐々木麟太郎【写真:羽鳥慶太】

同点で試合が1時間半の中断…佐々木麟太郎が明かす再開までの裏側

 第105回全国高校野球選手権は13日、阪神甲子園球場で大会第8日を行い、花巻東(岩手)がクラーク国際(北北海道)を2-1で下して3回戦進出を決めた。1-1の同点で迎えた8回に、2度の豪雨で試合が1時間半に渡って中断するという波乱含みの展開。高校通算140発の大砲、佐々木麟太郎内野手(3年)は「試合をさせていただけて感謝しかない」と、勝負を分けた時間帯の裏側を明かした。

 試合は花巻東が4回、1死三塁から4番の北條慎治投手(3年)の適時内野安打で先制した。ただ7回に失策が絡んで同点とされると、8回にもクラーク国際が1死一、二塁の好機をつくった。ここで上空の暗い雲から大粒の雨が落ちはじめ、カウント3-2という何とも微妙なタイミングで中断入りした。

 20分ほどで雨は上がり、場内にはグラウンドの“神整備”で知られる阪神園芸のスタッフがトンボや三輪車を手に登場。スタンドからは大歓声が上がった。一度は整備が完了し、選手がアップを開始したものの、ここで再びの豪雨。中断時間は計1時間34分に及んだ。

 この場面を佐々木麟は「すごい雨で、回復は難しいのかなと思った。自分たちもグラウンドの整備をするので分かるのですが、あそこから元に戻すのは難しい。試合をさせていただいて、阪神園芸の方にも感謝しかない」と振り返り、神業スタッフに最敬礼だ。

 追いつかれ、なおピンチという状況での中断を、佐々木麟は前向きにとらえていた。「流れが悪かったので、心も体もリセットできたのかなと思う。走者を背負ってのスタートでしたが、しっかり守ることができた」。しっかり意志を持って、再開に備えていた。

グラウンド整備をするからわかる“神っぷり”に「感謝しかない」

 長い中断のため、花巻東の投手は3番手の中屋敷祐介(3年)に代わった。フルカウントからの再開で初球はボール。満塁となったが、後続を打ち取り無失点でしのいだ。その裏の花巻東は、先頭の久慈颯大外野手(3年)が三塁内野安打で出塁。1死後、佐々木麟の遊ゴロで二進し、続く北條は四球を選ぶ。2死一、二塁から「5番・二塁」の千葉柚樹主将(3年)が左前に決勝打を放った。

「3番・一塁」で先発した佐々木麟自身は4打数無安打。初回の打席は空振り三振、4回無死二塁では遊ゴロ、6回無死一塁では二ゴロ、そして8回の打席と、走者を置いての打席では結果的に進塁打を残した。「全体通してゴロが多かったですが、タイミングを取れた部分もある。感触は悪くない。自分の内容より、ランナーが進んでよかった」とし、クラーク国際の先発、新岡歩輝投手(3年)に「攻めた投球に苦労させられた。いい経験をさせてくれてありがとうと言いたい」と賛辞を贈る。

 甲子園のファンが待ち望む佐々木麟の1発は出なかったものの、岩手大会から調子が上がらず苦しんでいた千葉が試合を決めた。中断時間に、選手たちへ「この時間はプラスだ。とにかく堅い守りで辛抱しよう」と説いていたという佐々木洋監督は「時間をうまく使ってくれた」と選手たちの精神力と自己管理に満足そう。涼しいベンチ裏に下がってアンダーシャツを着替えるなど、タイブレークに備えた準備もしていたという。

 佐々木麟は「接戦は想像していましたが、厳しい試合を落とさなかったのが良かった」。2年春の選抜以来、自身2度目の甲子園はまだ終わらない。何度も口にする「岩手のプライド」を胸に、日本一目指して戦い抜く。

(羽鳥慶太 / Keita Hatori)

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