試合前の“14失策”が導く堅守「ミスは前提」 神村学園のノックに隠された秘密

神村学園は仙台育英に敗れ決勝進出はならなかった
神村学園は仙台育英に敗れ決勝進出はならなかった

神村学園の試合前ノックでは、わざと打球を“エラー”する

 第105回全国高等学校野球選手権大会は21日、準決勝2試合が行われ、第1試合では神村学園(鹿児島)が仙台育英(宮城)に2-6で敗れた。県勢29年ぶりとなる決勝進出とはならなかったが、堅い守りからリズムを作り、4強入りの快進撃を見せた。

 今大会、内野手の失策は初戦に二塁を守っていた松尾龍樹内野手(3年)が初戦で記録した1つのみ。準決勝でも、確実な守備が光った。その堅守の秘訣が、特殊な練習にある。試合前ノックで、内野手は全員が打球をポロポロとこぼし、拾い上げてから送球するのだ。決してナインが緊張で固まっているということではなく、明確な意図がある。

 試合前ノックの内容は、チームによって異なる。神村学園は外野ノックからスタートし、そのあと内野ノックへ。計7人の内野手は、捕球すると思いきや前にこぼし、拾い直して一塁へ送球。これを2度繰り返す。

 試合前にわざと“エラー”する独自のノックは、春季大会から導入された。2戦目以降、主に遊撃を守ってきた松尾龍は「今まで、ランナーがいる時にしっかり打球を止めて1つアウトを取ればいいところを、雑に捕りに行ってピンチが広がって、大量失点に繋がるという課題があった」と明かす。

エラーにも“コツ”「ボールをしっかり見ないといけない」

 ノックバットを握る小田大介監督は「(以前は)慌てることがすごく多かった。もう、習慣として、ミスは前提のもと、落としたとしても慌てずに、きちっと拾って投げればアウトを取れるんだよというところから、試合前ノックからわざとエラーをさせて、処理する練習をずっとやってきた」と語る。

 練習で1度はじくことで、試合で打球をはじいた際に慌てることを防ぐ効果がある。松尾龍は「打球を捕る時に、エラーした後の事を考えられるようになりました」と成長を実感。指揮官は「逆にいい形(体勢)で打球に入らないと、自分の前にポロっとエラーできないので、そういった意味ではボールをしっかり見ないといけないし、いい方に働いて守備力が上がってきたのかなと思います」と目を細める。

 準決勝では昨夏王者に足を絡められ、3回には4失点を喫したが、以降は互角の展開。安打数は1本差、失策は捕手の暴投による1つで、仙台育英の2つを下回る堂々の戦いぶりだった。指揮官は「堅い守りで粘り強くやってくれた。本当によく頑張ってくれたと思います」とナインの健闘を称える。試合前の“エラー”が、全国屈指の守備力の礎となっていた。

(上野明洸 / Akihiro Ueno)

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY