慶応ベンチ入り唯一の“一般入試組” 1日10時間…猛勉強で掴んだ107年ぶりV
背番号14を背負った宮尾青波内野手は、一般入試で慶応高に入学
慶応(神奈川)は23日、阪神甲子園球場で行われた第105回全国高校野球選手権の決勝・仙台育英戦に8-2で勝利し、107年ぶり2度目となる夏の頂点に立った。三塁ランナーコーチを務めた宮尾青波(せいは)内野手(3年)は、ベンチ入りメンバーでは唯一の“一般入試組”。今大会は守備固めと代走で2試合に出場。「あまり実感はわいていないですけど、優勝できてうれしい」と喜びを噛み締めた。
小学生の頃から、文武両道を日本一のレベルで出来る高校に憧れていた。「小学校の時は特別な勉強はしていないです、与えられた課題をしっかり毎日取り組みました」。6年時にはベイスターズジュニアにも選ばれた実力の持ち主だが、慶応は一般入試での入学を目指した。中学3年の8月にシニアの大会が終わると、2月の受験に向けて猛勉強。「集中して、1日10時間くらい」。野球部に入部すると、推薦入試組に負けじと汗を流してきた。
168センチ、62キロと小柄だが、2年生の夏が終わって新チームが始まると、高い守備力を生かし、背番号14でベンチ入りを果たした。チームメートからの信頼も厚く、正遊撃手の八木陽内野手(3年)は「受験で入ってきて本当に凄いなと。守備ではチームに欠かせない存在。練習ではみんなの参考になっている」と語る。
「自分が頑張ることによって一般入試の部員にも励みになる」
慶応には推薦入試、内部進学、一般入試の3種類の入学方法があるが、今大会のベンチ入りメンバー20人の中では、一般入試からの入部は宮尾ただ1人。だからこそ、特別な思いもある。「一般入試から入ってきた自分が頑張ることによって、(推薦入試組と)お互いに切磋琢磨できてレベルも上がると思う。他の一般入試の部員にも励みになると思って、代表していると思って、頑張っていました」。
8点を奪った決勝戦では、三塁コーチャーズボックスで大応援を背に何度も腕を回した。「今日ほど、応援の凄さを感じた日はないというか、感謝の気持ちしかないです」。9回には四球で出塁した清原勝児内野手(2年)の代走で出場し、その後三塁の守備に就いた。ゲームセットとなった左翼ファウルフライも最後まで追いかけ、歓喜の瞬間を迎えた。
107年ぶりとなる慶応の甲子園優勝メンバーの一人となった“一般入試組”の宮尾は、アルプスの後輩やこれから慶応を目指す球児にとっても、価値ある存在となったはずだ。
(上野明洸 / Akihiro Ueno)