「思い切って仕掛ける必要があろう」 “阪神戦6タテ”回避に導いた原監督3つの決断

巨人・原辰徳監督【写真:荒川祐史】
巨人・原辰徳監督【写真:荒川祐史】

2番手のルーキー田中千晴が流れをせき止める好救援

■巨人 4ー2 阪神(27日・東京ドーム)

 巨人は27日、本拠地・東京ドームで行われた阪神戦に4-2で逆転勝ち。今季5勝14敗1分となった阪神戦での勝利は、7月27日(甲子園)以来1か月ぶりで、東京ドームでとなると6月30日以来2か月ぶり(7月2日の1引き分けを挟む)。首位を走る猛虎になんとか一矢報いた裏には、原辰徳監督の“3つの決断”があった。

 序盤の展開は最悪だった。先発のヨアンデル・メンデス投手は2回、2四球を与えた後、佐藤輝明内野手に左前適時打を浴び、早々と先制を許した。そして3回、1死から近本光司外野手に死球を与えると、一塁への牽制球がボークを取られ、二塁へ進塁される。さらに次打者・中野拓夢内野手への3球目を岸田行倫捕手がパスボール。しかも三塁をオーバーランした近本を刺そうとした岸田の三塁への送球が大きくそれ、ノーヒットで追加点を与えてしまった。

 さらにこの回、メンデスが2死から大山悠輔内野手を四球で歩かせ一、二塁とされると、原監督は早くもベンチを出た。ドラフト3位新人の田中千晴投手へスイッチ。メンデスを前回登板の20日・広島戦(マツダスタジアム)に続き、2試合連続で3回途中で降板させるのは大きな誤算だったはずだが、制球難にバッテリーミスが重なり、ムードが悪すぎた。田中千は、シェルドン・ノイジー外野手を遊ゴロに抑えて追加点を許さず、さらに4回と5回も続投し、無安打無失点(1四球)で乗り切った。一気にワンサイドとなりかねない流れをせき止め、2点差で収めたことは、試合展開上極めて大きな働きだった。

 原監督は「先発投手の本来の役割からすると、流れ、リズムという部分がね……」と顔をしかめつつ、「田中千晴がよく投げたと思いますね」と新人の奮闘を称えた。

 一方、打線では、20歳の秋広優人内野手を6月16日の楽天戦(東京ドーム)以来、51試合ぶりにスタメンから外した。この日の阪神先発は、昨年から5連敗中だった“天敵”の左腕・伊藤将司投手。この一戦に負ければ、今月8日から10日までの対阪神3連戦(東京ドーム)と合わせて、本拠地で虎に屈辱の6連敗となってしまうところだった。あえて秋広を外して右打者を増やしたところに、原監督の執念が表れていた。

「今日は秋広のお兄ちゃんに賭けた」

 秋広は2-2の同点の7回、2死三塁の好機に代打で登場したが、伊藤将の前にニ直に倒れた。原監督は「今日は(本人ではなく)秋広のお兄ちゃんに賭けたのだけれど、お兄ちゃんも、もうひとつだったね」とジョークに紛らわした。

 そして同点で迎えた8回。2死から北村拓己内野手が四球で出塁すると、原監督はドラフト4位新人の門脇誠内野手を代走に送った。門脇は続く坂本勇人内野手への、カウント2-2からの5球目に果敢に二盗を決める。得点圏に進んだことで、坂本は続く6球目を選んで四球で歩き、続く岡本和真内野手の勝ち越し適時打につながったのだ。

 門脇は今季9個目の盗塁成功(2盗塁死)だったが、リスクはあった。それでも原監督は「今のタイガースは勢いのある、非常にいいチームですから、逆に思い切って仕掛ける必要があろうというところですね」と説明した。

 メンデスの早い回の降板、秋広外し、のるかそるかの盗塁が功を奏し、1か月ぶりに阪神戦に勝利した原監督。会見でそこを聞かれると、「ドキッ。この頃、3日前のことは忘れるんだよ」と笑わせたが、学生時代からライバル関係にあった岡田彰布監督が率いる阪神だけになおさら、このままやられっぱなしでは終われないはずだ。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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