空前の“投高打低”…防御率1点台は当たり前 進化裏付けるパの「3.0」&セの「1.5」

ロッテ・佐々木朗希、オリックス・山本由伸、中日・高橋宏斗(左から)【写真:小林靖、中戸川知世】
ロッテ・佐々木朗希、オリックス・山本由伸、中日・高橋宏斗(左から)【写真:小林靖、中戸川知世】

5年間でストレートの平均球速がパは3キロ、セは1.5キロ上昇

 プロ野球の2023年シーズンも佳境に入り、各球団の残り試合は30前後となっている。この時期になるとタイトル争いにも注目が集まる。パ・リーグ投手部門ではオリックス・山本由伸投手が防御率1.42と、今季も驚異的な数字を叩き出している。セ・リーグも阪神の村上頌樹投手が、同1.89とハイレベルな成績を残している。近年は防御率が「1点台」でフィニッシュする投手も珍しくなくなった。“投高打低”ともいえる近年の投手成績について、直球のスピードに焦点を当ててみる。(数値は8月29日終了時点)

 分析にはセイバーメトリクスの指標を用いて分析などを行う株式会社DELTA(https://1point02.jp/)のデータを用いた。今季のリーグ全体の直球の平均球速は、パで「146.7キロ」、セで「146.3キロ」となっている。

 パ・リーグは、2019年の同数値は「143.7キロ」となっており、この5年間で3キロも球速がアップしたことになる。セ・リーグも2019年は「144.8キロ」だったため、5年で1.5キロ上昇している。

 選手別にみると、全体トップはロッテ・佐々木朗希投手の159.3キロとなっている。左内腹斜筋損傷で離脱中だが、7月12日のオリックス戦では日本人最速タイの165キロを記録するなど、2位の甲斐野央投手(ソフトバンク)の155.8キロを大きく引き離している。セ・リーグのトップは中日のライデル・マルティネス投手の155.7キロ。この3人までが155キロを超えている。

 特筆すべきは先発投手の球速アップか。2019年に規定投球回数に到達したスターターのトップは千賀滉大投手(当時ソフトバンク)で153.2キロだった。2位は山本由伸の150.9キロで、12球団で150キロ以上を記録したのはこの2投手だけだった。今季はここまで、中日・高橋宏斗投手の153.1キロを筆頭に、山本由伸(152.9キロ)、DeNAのトレバー・バウアー投手(151.9キロ)、西武の平良海馬投手(151.5キロ)と高橋光成投手(150.5キロ)の5人が“150キロ超え”となっている。さらに規定以下ではあるが、上記の佐々木朗やオリックス・山下舜平大投手が154.4キロと高い数値を記録している。

 わずか5年での球速の変化は、リーグ全体の投手レベルが上がってきている裏付けの一つといえる。手強い投手を打ち崩すことで、打者のレベルも向上する――。投手の飛躍的進化を機に、プロ野球全体のレベルアップを期待したい。

(Full-Count編集部 データ提供:DELTA)

データ提供:DELTA http://deltagraphs.co.jp/
 2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』(https://1point02.jp/)も運営する。

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