打席で自問自答「さあ、どうする?」 急成長の西武ドラ1、飛躍支える“野球IQ”
松井監督「彼はいろいろなことを考えながら野球をやっている」
■ソフトバンク 3ー2 西武(3日・ベルーナドーム)
西武は3日、ベルーナドームで行われたソフトバンク戦に2-3で敗れた。「3番・右翼」でスタメン出場した、ドラフト1位ルーキー・蛭間拓哉外野手は、8回に左犠飛で打点を挙げて存在をアピール。最近6試合は、クリーンアップ(3番3試合、5番3試合)を任され、21打数7安打(.333)と上々の結果を残している。
1-3の2点ビハインドで迎えた8回。無死一、三塁の好機に左打席に入った蛭間は、ソフトバンク4番手の松本裕樹投手に対し、初球は外角低めの150キロ速球、2球目は内角高めの149キロ速球に手を出さず、あっという間に0-2と追い込まれた。「初球からいきたかったのですが、踏み込み切れずに初球を見逃してしまった。2球目は自分としては高いと思いましたし、打つべきボールではなかったと思います」と説明。「気付いたら追い込まれていて、ヤバイ、どうしようと思いました」と胸の内を明かす。
ここで“頭脳派”のドラ1ルーキーは、思考を巡らせた。「なんとしても内野フライはダメ、内野ゴロもダメ、三振もダメ。さあ、どうする?」と自問自答。「最悪でも外野フライを打つつもりで、ストレートを手元まで引き付ける意識の中で、フォークもケアしました」。3球目の外角低めのフォークへ必死にバットを伸ばし、レフト後方へフライを打ち上げ、三塁走者を楽々ホームに迎え入れたのだった。
この姿に松井稼頭央監督は「彼は対応力が高く、いろいろなことを考えながら野球をやっている。あの球は引っ張りにいかずに、逆方向へ持っていった方が犠飛の確率が高くなりますから」とうなずき、蛭間の“野球脳”を称賛した。
さらに松井監督は「彼の打球は、逆方向(レフト方向)でも伸びていく。楽天戦でもレフト線へ打っていました。いい打ち方で打っていると思います」とも指摘。確かに、8月29~31日に敵地・楽天モバイルパーク宮城で行われた楽天戦で、蛭間は10打数4安打、全てのヒットが左翼方向だった。
守っても初回に美技「ドライブ気味の打球でした」
オープン戦で振るわず、開幕は2軍スタート。1軍昇格も6月23日までずれ込んだ。しかし徐々に実力を発揮し、当初1割台だった打率も.266(3日現在)に上昇。ここにきてクリーンアップに定着しようとしている。本人は「1日1日必死です。3番打者であっても、3番目なだけなので、これからもスタイルを変えずに食らいついていきたいと思います。前にも後ろにも頼りになる先輩がいるので、自分が決めるというより、次につなぐことを意識しています」と殊勝な心がけだ。
打撃だけではない。初回の守りでは、近藤健介外野手が放った右前への打球に対し、猛然と前進。ダイレクトキャッチした後、勢い余って前へ1回転した。「パーソル パ・リーグTV」の公式X(旧ツイッター)も、この美技を映像で紹介。蛭間自身「ドライブ気味の打球でしたが、なんとか捕れてよかったです」と口元を綻ばせた。
2020年のドラフト1位で、最近9試合連続で4番を務めている渡部健人内野手とともに、クリーンアップが板についてきた蛭間は、来季以降西武の屋台骨を支える期待の星だ。