現役高校生&大学生が本気の“職業体験” 延べ3か月、33人で作ったDeNA「学園祭」の意義
100人超の応募から選ばれた33人がイベント企画や運営を学び実践した
横浜DeNAベイスターズは、1日~3日に行われた巨人3連戦で、「港星学園祭(べいすたがくえんさい)」を開催した。通称「港星祭(べいすたさい)」は、「みんなでつくる」をコンセプトに現役高校生・大学生計33人がイベントに向けてのアイデア出しから、当日のイベント運営まで携わった。学生ならではの視点で描かれた3日間は、大盛況で幕を閉じた。
100人を超える応募の中から選ばれたのは、高校生13人、大学生20人の計33人。「横浜スポーツビジネススクール」実践編のプログラムとして、約3か月にわたってイベント企画や運営を学び、飲食(5人)、試合演出(13人)、事前VTR(8人)、場外演出(7人)の4グループに分かれて活動。巨人3連戦で“本番”を迎えた。
決まっていたのは、学園祭をテーマにしたイベントを3日間開催するということだけ。そこからどう企画をつくっていくかは、学生のアイデアに委ねられた。活発に意見が飛び交い、担当の矢野沙織さんは「みんなベイスターズを好きというのもあって、ファンの人が見ても納得できるストーリーをつくってくれたり、とにかく研究をしっかりしてくれているんだなというのを感じました」と感心する。
試合演出のリーダーを務めた武蔵野美術大1年の田中風羽子さんは、ベイスターズファンであり球団職員に興味があったことから応募した。試合前に流れた、山崎康晃投手がマイクを持って学生たちにインタビューする「ヤスアキマイク」の映像などを担当。「今まではいちファンとして完成されているものを見るだけで、それは楽しいのも面白いのも当たり前でした。その裏には、締切とか事務的なことから、何でそうしたいのか、その方法で行うことにどんな価値があるのか、どの客層を狙うとか、楽しませるという行為にも土台が必要なんだなと凄く感じました。これから見方は変わってくるなと思います」と新たな視点を得たようだ。
フォトブースの設営やチケットゲートの装飾などを手掛けた場外演出のリーダー・中央大2年の田中千尋さんは、「私たちの班には高校生が3人いて、凄く新しい意見を出してくれました。大学生になって、現実的に考えてしまい『ちょっと難しいな』とか思ってしまうことがあったんですが、まずは質より量で意見を出していくことの大切さと、その意見を遮断せずに無理だったら代替案を出すこととか、とにかく意見を出していくことの大切さを感じました」と学びを得た。
離脱者なし…担当者「野球運営の楽しさを知ってもらえれば」
それぞれの班の連携がうまくいかなかったり、33人が同じ方向に進むことに躓いたこともあったという。それでも、田中風羽子さんが「球団職員さんからも『そこに捉われすぎずに自分たちのやりたいことをやって、あとで合わせることもできるから』と言っていただいて、臨機応変な動き方も大事なんだなと思いました」と振り返ったように、徐々に意思統一も進んでいった。
全7回のプログラムを経ての3連戦だったが、それ以外にも学生たちは考えが足りないと自主的に集まったり、球団職員との打ち合わせを行ったりした。矢野さんは「本当に3か月間みっちりで、私たちとのやり取りなども含めれば毎日動いていたくらいだったと思います。私たちが普段社内でやっている依頼シートをつくったり、実務もやってもらっていました」と明かした。
そうしてつくり上げたイベントを、3日間で多くの人たちが楽しんだ。実際にファンが楽しんでいるところを見るのは、学生たちにとって代え難い経験となった。田中風羽子さんも田中千尋さんも、声を揃えて「本当に楽しかったですし、今後に活きるいい経験をさせていただきました」と目を輝かせた。
学校行事などでの欠席はあったが、1人も離脱することなく終えた。「とにかく楽しんでもらえていると感じたので、それを通じて野球運営の楽しさとかを知ってもらえればいいかなと思います」と矢野さん。スペシャルイベントとして初めて実施した「横浜スポーツビジネススクール ~イベント企画・運営 実践編~」は、球団にとっても学生にとっても貴重な場となった。