連続KO→10回無失点「全然、もう1回行けた」 1か月勝ち星なしの戸郷を変えた“脱力”

中日戦に先発した巨人・戸郷翔征【写真:小林靖】
中日戦に先発した巨人・戸郷翔征【写真:小林靖】

この日のラストボール140球目に最速タイ150キロを計測

■巨人 0ー0 中日(8日・東京ドーム)

 巨人の戸郷翔征投手は8日、本拠地・東京ドームで行われた中日戦に先発。延長10回まで投げ3安打無失点に封じたが、試合は12回の末0-0のスコアレスドローに終わり、今季11勝目を逃した。それでも23歳のタフネス右腕はチームのクライマックスシリーズ(CS)進出のため、さらに熱い思いをたぎらせる。

 戸郷が延長10回のマウンドに歩を進めると、4万192人の観客をのみ込んだスタンドからこの日一番の歓声が沸き起こり、“トゴー・コール”となって降り注いだ。「本当にうれしいコールでした」。ポーカーフェースは崩さなかったが、心中高鳴るものがあった。

 先頭のダヤン・ビシエド内野手を、外角低めいっぱいの147キロ速球で見送り三振に仕留めると、続く石川昂弥内野手にはスライダーを3球続けてカウント1-2と追い込んだ。そして真ん中低めの149キロ速球で、2者連続の見逃し三振。その瞬間、思わず雄叫びを上げた。木下拓哉捕手にはボテボテの当たりの三塁内野安打を許すも、続く代打の後藤駿太外野手に対し、カウント1-2から投じた140球目のラストボールが、この日最速タイの150キロを計測。右飛に打ち取り、涼しい顔でマウンドを降りた。

 10回3安打11奪三振2四球無失点。プロ5年目にして、先発して10イニングを投げたのは初めてだった。その裏の攻撃の先頭で打順が回り、代打を送られたが、「球数的にはもう1回投げられました。全然、もう1回行けた」と言い切るのだから恐れ入る。実際に、10勝目を挙げた8月3日・ヤクルト戦では自己最多の149球(9回)を投げ、他にも140球を超えたことが今季は2度ある。今季3完投はリーグ最多タイ。この日は11回と12回に他の投手が登板したため完投にはカウントされないが、球界屈指のタフネスぶりを十二分に披露した。

 前々回登板の8月25日・阪神戦で5回途中6失点、前回登板の今月1日・DeNA戦でも4回5失点で連続KOされていたが、この日はむしろ“脱力”を心がけた。ラストボールを含めて150キロを2度計測した延長10回も「1発を打たれてはいけないところだったので、そこだけを気を付けてコントロールを意識しました。それほど力を入れた感じではない」と言う。

巨人・大城卓三(左)と戸郷翔征【写真:小林靖】
巨人・大城卓三(左)と戸郷翔征【写真:小林靖】

「タイトルも狙っていけたらと思います」

「最近は力を入れてあまりいい結果が出ず、それを変えたらいい結果が出た。これからも継続していこうかなと思います」。8月3日のゲームを最後に、勝利数は5試合足踏みが続いている(その間3敗)が、トンネルの先に光明が見えたようだ。

 チームは現在4位で、3位・DeNAとのCS出場権争いが熾烈となっている。「僕の中ではいろいろ考えています。阿波野(秀幸投手チーフコーチ)さんがOKを出すかどうかわかりませんが、登板数が増えるように、そういう感じでいこうと僕は思っています」。今後は登板間隔を詰めることも辞さない構えだ。

「チームの勝利が一番ですが、タイトルも、目の前にあるわけではありませんが、狙っていけたらと思います」とも。勝利数が伸び悩んでいる間に、13勝のDeNA・東克樹投手に3差をつけられ、118奪三振もトップのDeNA・今永昇太投手の152奪三振とは差があるが、昨季の最多奪三振に続く個人タイトル獲得を諦めてはいない。

 既に人一倍の球数を投げながら、もっとチームに貢献しよう、もっといい成績を残そうと、飽くなき意欲を燃やす戸郷。その心意気にファンはしびれる。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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