「普通だったら代打やけど」 “10勝トリオ”誕生を後押し…岡田監督が見せた親心

阪神・岡田彰布監督【写真:小林靖】
阪神・岡田彰布監督【写真:小林靖】

7回1死満塁の場面で9番・伊藤将をそのまま打席へ「いかせて下さい言うから」

■阪神 5ー1 広島(10日・甲子園)

 阪神が、広島の天王山で首位の力を見せつけた。甲子園での3連戦最終戦の10日は阪神が5-1で勝利し、優勝へのマジックを2つ減らして「5」に。終盤までもつれたゲームを制した要因は、岡田彰布監督の“親心”と、選手への“信頼”だった。

 阪神・伊藤将と広島・九里の意地がぶつかった投手戦。阪神は1-1のまま迎えた7回に千載一遇のチャンスを掴んだ。1死から2つの相手失策と申告敬遠で満塁。ここで9番・伊藤将に打席が回ったが、岡田監督は代打を送らず「お前で決めてこい」と、左腕に託した。

 結果的に三ゴロ併殺で無得点に終わったが、伊藤将は8回を3者凡退で抑える。その裏に代打・糸原の勝ち越し2点適時打など一挙4得点を奪い試合を決めた。本来なら7回の好機で代打を送り勝負をかけたい場面も、岡田監督はベンチでうっすら笑みを浮かべ戦況を見つめていた。

「今日はもう、伊藤も10勝かかってたんで。同点でも『9回までいかせてくれ』言うたんでね。普通だったら代打やけど。いかせてください言うから」

伊藤「(打席に)行かせてくれるのは先発してうれしいこと」

 すでに本拠地で広島に勝ち越しを決め首位を独走。18年ぶりの“アレ”が間近に迫ってきたチームの余裕を感じさせる采配ともいえる。それでも、併殺だけは予定外のようで「まぁ、一人アウトぐらいでよかったんやけど(笑)。近本で満塁でよかったんやけどなぁ」と試合後は苦笑いを浮かべていた。

 重要な局面でも背中を押し、席に立たせてくれた指揮官の思いを左腕は十分に理解していた。初戦の村上、2戦目の大竹が先発の役目を果たし10勝をマーク。無四球の快投を見せた2人からバトンを受け継ぎ「長いイニング投げるのはずっと心掛けてきたので。同点だったら自分で責任を負った方がいい。ああやって(打席に)いかせてくれるのは先発として嬉しいこと。一緒に10勝できるように投げました」と、8回3安打無四球、1失点の快投を振り返った。

 今季3度目の8連勝をマークし、広島には“引導”を渡す同一カード3連勝。3日間でマジックを一気に7つ減らし、最短でのVは14日の本拠地・巨人戦となった。マジック5の現状に「おーん。片手になったですね。相手も巨人だし。まぁね、楽しみにファンの皆様に応援してもらいたいですね」と岡田監督。

 個々の成績にも配慮し、チームは試合を重ねるごとに成長している。セ・リーグ全球団に勝ち越しを決めた歴史的なシーズン。最後の最後まで猛虎の勢いは止まらない。

(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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