「言葉に気をつけていた」2年で感じた阪神の“宿命” 他球団にない独特な空気

ソフトバンクの中田賢一4軍投手コーチ【写真:竹村岳】
ソフトバンクの中田賢一4軍投手コーチ【写真:竹村岳】

ソフトバンク・中田賢一4軍投手コーチが思い出す阪神時代

 圧倒的な強さを見せた古巣の悲願は、他人事では片付けられない。ソフトバンクの中田賢一4軍投手コーチは2021年までの2年間、阪神に在籍。18年ぶりのセ・リーグ優勝に「一緒にやったメンバーがたくさんいるので」と喜ぶ。同時に、様々な意味で“特別”だった関西での日々を懐かしんだ。

 中田コーチは2004年のドラフト2位で北九州市立大学から中日に入団した。2013年オフに国内FA権を行使してソフトバンクに移籍し、2019年オフに無償トレードで阪神へ。17年間の現役生活で、通算100勝を挙げた。タテジマのユニホームに袖を通していたのはわずか2年間だったが「(優勝した選手たちは)基本的に一緒にやったメンバーしかいないので。実際に頑張っている姿を見るとうれしいです」と笑う。

 3球団を経験した上で、阪神にしかない“色”をこう話す。「やっぱりメディアの注目度。ホークスもすごいですけど、またちょっと違う空気というか、伝統がある。記者の方も多いですし、ちょっとした発言が記事になるイメージがあったので。めちゃくちゃ言葉には気をつけて話をしていました」。短い期間でも、中田コーチなりに感じたのが人気球団ならではの“宿命”だった。

 阪神移籍が発表されたのは、2019年10月26日。関西では1面で報じたスポーツ紙もあり「歓迎ムードというか『頑張ってくれ』という思いをすごく感じた」とその瞬間を振り返る。名古屋、福岡のメディアも、もちろん地域密着。どちらも露出は少なくないはずだったが、阪神と比較すると「テレビ番組含め、タイガースの情報を扱うものが多いじゃないですか。開幕直前には特番もあって、そこの凄みは感じていました」とキッパリ言う。

岡田阪神の目玉だった“JFK”には苦笑い「6回までに負けている状態で…」

「特にタイガースに関しては、ファンの皆さんの日々の生活の一部というか。そこを左右する、影響のあるチームだと思うので。今回の優勝の喜びはひとしおなんじゃないかなと思います。僕は(中日に入団した)プロ1年目が2005年だったので、その時もタイガースが優勝して。あの盛り上がり方も、1年目ながら覚えていますし、すごく印象に残っています」

 その年の阪神は、MVPに輝いた金本知憲を筆頭に、赤星憲広や今岡誠らスター選手揃いだった。プロ1年目から15試合(13先発)に登板した中田コーチは、当時の阪神打線について「足を使える選手もいて、アベレージも長距離ヒッターもいるし。嫌なバッターが多かったですね」と振り返る。特に嫌だった打者を聞かれても「総じて嫌でしたよ。全部が打たれそうなイメージでマウンドに立っていた。常に怖いなって思っていました」と、とにかく必死に投げていた記憶が残っている。

 第1次岡田阪神の当時の目玉と言えば、「JFK」と呼ばれた必勝パターン。ジェフ・ウイリアムス、藤川球児、久保田智之の盤石なリレーには「6回までに負けている状態で渡さないようにっていつも考えていました」と苦笑いするしかない。今季も岩崎優投手が32セーブ(16日時点)を挙げ加治屋蓮投手や岩貞祐太投手がその脇を固めている。「終盤、(いろんな投手を)回し回しでも抑える形を取れているのは投手陣の層の厚さを感じますね」と、強さに感服していた。

(竹村岳 / Gaku Takemura)

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