台湾女子主将が痛感する日本との差 “転がされたボール”に驚き「野球そのもの」

台湾代表・謝鈺瀅(左端)【写真:喜岡桜】
台湾代表・謝鈺瀅(左端)【写真:喜岡桜】

U-18決勝、2018年女子W杯決勝で対戦…しのぎを削る日本と台湾

 アジアの“好敵手”の目に映る日本の野球とは――。W杯7連覇を狙う「侍ジャパン」女子代表が、13日から広島・三次きんさいスタジアムで5日間に渡って行われたカーネクストpresents「第9回WBSC女子野球ワールドカップ・グループB」で5戦全勝。ファイナルステージ(2024年7月28日開幕、カナダ・サンダーベイ)進出を決めた。2012年から続くW杯無敗記録を35試合に伸ばした日本代表。グループを2位通過した台湾代表の主将は日本の野球をどう見ているのか。

 台湾は、0-2で敗れた日本戦以外の4試合すべてに勝利。グループBを2位通過し、ファイナルステージにコマを進めた。世界ランキングでは1位の日本に続く2位に上昇。主将の謝鈺瀅(シェ・ユイン)投手兼内野手は「確実に力の差が詰まってきている」と手応えを感じている。初の世界制覇まであと一歩に迫った2018年の前回大会決勝では、日本に0-6で完封負けし、悔し涙を流した。

 台湾代表として7度目のW杯出場を果たした謝は、日本にゆかりがある。2010年から代表チームに名を連ねながら、2018年には日本女子プロ野球リーグ(JWBL)の入団テストに挑戦。台湾出身初の日本女子プロ野球選手として「京都フローラ」で2年間プレーした。その後、クラブチーム「兵庫ブルーサンダース」へ移籍。日本の野球文化に3年間触れ、選手としての腕を磨いた。

 日本に慣れ親しんだ謝が「とても印象深い試合でしたね」と語った一戦がある。9月10日に台湾・天母野球場で行われた「第31回 WBSC U-18ベースボールワールドカップ」の決勝だ。馬淵史郎監督(明徳義塾)が率いた侍ジャパンU-18代表は“今大会最強クラス”と称された台湾と顔を合わせた。日本代表は先制を許したが、4回に3者連続のバントと機動力を生かして逆転に成功し、2-1で悲願の大会初制覇を成し遂げた。

台湾との決勝戦、逆転スクイズを決めた侍U-18代表・高中一樹【写真:荒川祐史】
台湾との決勝戦、逆転スクイズを決めた侍U-18代表・高中一樹【写真:荒川祐史】

U-18W杯決勝は「野球そのもの」逆転を可能にした日本の“助け合う心”

「日本の野球を一言で表すなら“難しい”でしょう。あの戦況で日本はボールを転がしただけなんです。バントでひっくり返した。台湾代表も全力を尽くしたと思います。悔しいですけど、転がされたボールに負けた。まさに野球そのもののような試合だったと思いますね」。噛み締めるように語った。

 台湾のクラブチーム「接棒未来女子棒球隊」でプレーをする傍ら、中華民国野球協会(CTBA)が認定する指導者C級ライセンスを2020年に取得し、小学生の指導に力を注ぐ。ボールを遠くへ飛ばす以外の勝ち方こそ、日本の武器だと称賛する。野球への取り組み方にも「我々台湾人が学ぶべきところ」があるという。

「日本選手はワンプレーに全力を注ぐことを重視していますが、その過程で誰かが困難に直面したら、みんなで一度立ち止まって、助け合いながら苦境を乗り越えようとするんです。素晴らしいと感じましたね。日本で女子プロ野球選手としてプレーした時に、そのように取り組む女子選手たちの姿から学びました。誰かの力になれるくらい、まだ頑張る必要があるんだと自覚させられたんです」。

 日本で吸収したこと全てを台湾の少年少女たちに熱心に教えている。台湾の野球が更にレベルアップするには「わたしたち台湾人もそのように困難へ挑戦する必要があります」と力を込める。さらに、2024年のファイナルステージに向け、投手力強化に加えて「チームの結束力を強くしないといけません。あとはもう少し日本の“バント戦術”を研究しないといけませんね」と意気込んだ。

 台湾代表は男女ともに、日本を超え、世界の頂点に立つために努力を続けている。

(喜岡桜 / Sakura Kioka)

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