大谷翔平より「アクーニャJr.に軍配」 井口資仁氏が考える“最高選手”の条件

ブレーブスのロナルド・アクーニャJr.(左)とエンゼルス・大谷翔平【写真:ロイター】
ブレーブスのロナルド・アクーニャJr.(左)とエンゼルス・大谷翔平【写真:ロイター】

ワールドシリーズへ進出するチームはどこ?

 メジャーではレギュラーシーズン全日程が終了し、3日(日本時間4日)から早くもポストシーズンが始まった。ア・リーグのワイルドカードシリーズ(WCS)では前田健太投手が所属するツインズと、菊池雄星投手が所属するブルージェイズが対決。勝利したツインズは勝ち進めば、リーグ優勝決定シリーズ(LCS)で藤浪晋太郎投手が所属するオリオールズと対戦する可能性がある。

 ワイルドカードの出場枠を巡り、最後まで緊張感溢れる試合が続いたメジャーだが、果たして今年のワールドシリーズに駒を進めるのはどのチームなのか。2005年にホワイトソックスの一員としてワールドシリーズ優勝を飾った野球評論家の井口資仁氏の予想は……? 井口氏が考えるポストシーズンの展開、そして来季の大谷翔平投手のライバルについて語ってもらった。

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 日本より一足早く、海の向こうメジャーではポストシーズンが開幕しました。今年はワールドシリーズの取材に行く予定なので、暖かく過ごしやすい街に行きたいと思い、テレビ番組での予想ではレイズを推しました。ただ、実際にワールドシリーズまで駒を進めるのは、ア・リーグはアストロズ、ナ・リーグはドジャースかブレーブスになるでしょう。あまりにも順当すぎて面白くない予想ですが(笑)。この3チームの実力と経験値は頭抜けたものがあります。

 ポストシーズンはWCS、ディビジョンシリーズ(DS)、LCS、そしてワールドシリーズまで短期決戦の連続ですし、独特の緊張感や雰囲気の中で戦うことになります。それだけに経験、そして戦い方を知っているか否かは大きなカギになります。そこを知り尽くしているのが、先ほどの3チームです。

 では、他のチームはどう対抗したらいいのか。ポイントの1つは「投手力」になるでしょう。いくらブレーブス打線の破壊力があるとは言え、一流投手との対戦となれば何が起こるか分からない。先発だけではなく中継ぎも合わせた投手力のあるチームが、特に短期決戦は有利と言えそうです。

 もう1つのポイントは「どれだけ勢いに乗れるか」。レギュラーシーズンに成績が良かった選手でも、プレーオフになったら急に不調になることもあります。特に打線はチームの軸でとなる、打つべき人が打てば機能し、自然と勢いや流れを引き寄せることができます。2008年にワイルドカードからワールドシリーズまで駆け上がったレイズは、勢いを味方につけた好例かもしれません。

野球評論家の井口資仁氏【写真:荒川祐史】
野球評論家の井口資仁氏【写真:荒川祐史】

全球団対戦スケジュールで浮き彫りになった各地区の強さ

 2022年からワイルドカード枠が「2」から「3」に拡大しました。増えた枠はたった1つなのに、ポストシーズン出場権を巡る争いは何倍、何十倍にも面白さを増したように思います。今季はワイルドカード争いが地区優勝争いと絶妙に絡み合い、シーズン最後の1週間はポストシーズンさながらの緊張感と盛り上がりでした。そういう意味では、圧倒的な強さで早々に地区優勝を決めたチームよりも、ワイルドカード枠のチームの方が、日程面でのキツさはありますが、勢いはありそうです。

 両リーグともに東地区から3チーム出場していますが、これは今季から全球団と対戦する日程になった影響が大きいです。自チームを除く全29球団と対戦するため、必然的に同地区対決の数が減少。その結果、各地区の強さが浮き彫りになりました。特に、以前からハイレベルとされてきたア・リーグ東地区は、後半戦になっても全チームが勝ち越している状況をキープ。最終的には最下位のレッドソックスを除く4チームが勝率5割以上で、ヤンキースとレッドソックスを除く3チームがポストシーズンに駒を進めました。こんな状況はなかなか珍しいと言えるでしょう。

 総合的に考えてみても、ア・リーグは衰え知らずのベテラン右腕、ジャスティン・バーランダー投手が加わったアストロズが、やはり総合力で勝っていると言わざるを得ない。また、ナ・リーグは実力も経験値も抜群で、シーズンを見ても断トツだったドジャースとブレーブスのどちらかが、最終的に勝ち抜くのではないかと思います。

ブレーブスのロナルド・アクーニャJr.【写真:ロイター】
ブレーブスのロナルド・アクーニャJr.【写真:ロイター】

40本塁打&70盗塁のアクーニャJr.の凄さ「ほぼ初球か2球目」

 ブレーブスと言えば、ロナルド・アクーニャJr.外野手の41本塁打、73盗塁という成績は圧巻でした。一般的には30-30が凄いと言われ、その上をいく40-40を達成したのは過去4選手のみ。それなのに、40-70を達成してしまうなんて、ちょっと考えられないです。40本塁打を放ち、70盗塁を走り、さらには打率.337。打者として求められる全てを兼ね揃えた存在と言えるでしょう。

 アクーニャJr.の凄いところは、早いカウントで盗塁すること。僕が見た限りでは、ほぼ初球か2球目に走っていたように思います。今季からベースが大きくなったり、牽制の回数が制限されたりというルール変更がありましたが、アクーニャJr.に関しては早いカウントで走るので牽制は関係ないですし、悠々セーフというタイミングで盗塁を決める。彼の実力が全てです。

 40-70。なかなか達成の難しい数字ですが、これこそ来季の大谷翔平投手が目指すべき数字ではないでしょうか。投手は休養し、打者として100%も力を注ぐシーズン。大谷にとってアクーニャJr.は一番のライバルになりそうです。

 大谷は二刀流の活躍で今季もア・リーグMVPの最有力候補とされていますが、もしアクーニャJr.と同じリーグにいたらMVPを獲れるかどうか……。不動の1番打者として40-70を達成し、打率3割超えでチームを地区優勝へ導いたアクーニャJr.。それに対して、前人未到の2年連続2桁本塁打&2桁勝利を達成しながらも負傷してしまい、チームもポストシーズン進出が叶わなかった大谷。野球はチームスポーツであり、目標は優勝であることを考えると、アクーニャJr.に軍配が上がりそうです。

 今季で契約満了となる大谷がもしナ・リーグに移籍したら、2人は互いにとって最強のライバルになるのでは。ポストシーズンではアクーニャJr.がどんな活躍を見せてくれるのか、そこにも是非注目してみたいと思います。

(佐藤直子 / Naoko Sato)

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