厳しい声を「全て受け止めます」 2時間超の居残り…山川が噛み締めた“再起の1日”

室内練習場でマシン打撃に取り組む西武・山川穂高【写真:宮脇広久】
室内練習場でマシン打撃に取り組む西武・山川穂高【写真:宮脇広久】

ソフトバンクの小久保裕紀2軍監督から声をかけられ打撃談義

 西武の山川穂高内野手は、秋季教育リーグ「第20回みやざきフェニックス・リーグ」に出場するため宮崎入りしているが、9日に南郷スタジアムで予定されていた初戦のソフトバンク戦はあえなく雨天中止。10日に同スタジアムで行われる四国アイランドリーグplus選抜戦で仕切り直しすることになった。とはいえ、隣接する室内練習場にチームで最後まで残ってマシン打撃に取り組むなど、中身の濃い1日を過ごした。

 全体練習の合間には、対戦相手となるはずだったソフトバンクのリチャード内野手としばし話し込む一幕もあった。リチャードは山川と同じ沖縄県出身で、シーズンオフには自主トレをともにしている“愛弟子”。その後、旧知のソフトバンク・小久保裕紀2軍監督からも声をかけられ3人で打撃談義を交わした。

「小久保さんは2000安打以上打っている方ですし、お話をさせていただくと本当に勉強になります」と山川は言う。小久保2軍監督は現役時代、通算2041安打を誇り、歴代17位の通算413本塁打、本塁打王1回、打点王1回のスラッガーでもあった。山川とは同じ右打者でもあり、技術面で共通する部分があるのだろう。

 全体練習終了後も、山川はなかなか宿舎ホテルへは戻らない。もともと例年の春季キャンプでも、とっぷりと日が暮れた後、室内練習場に最後まで残り打ち込むことがよくある。この日は育成選手の野村和輝内野手と組み、代わる代わる打席に立ちながら、2時間以上マシン打撃に取り組んだ。

 途中から今季1軍35試合出場の山野辺翔内野手、育成選手の是澤涼輔捕手も隣で打ち始め、山川は野村、山野辺、是澤に身振り手振りを加えながら、アドバイスを送っていた。是澤は「山川さんには『打者はタイプによって、打つべき角度が違う。是澤の場合はライナーをセンターへ返すつもりで打った方がいいと思う』という話をしていただきました」と明かす。練習施設に最後まで残っていたのがこの4人だった。

ファンにサインを書く西武・山川穂高【写真:宮脇広久】
ファンにサインを書く西武・山川穂高【写真:宮脇広久】

ネット上の厳しい意見も「全て受け止めています」

 山川はもともと、聞かれればチームの枠を越えてアドバイスを送る選手で、日本ハムの新庄剛志監督からグラウンド上で万波中正外野手の打撃について意見を求められたこともある。今年5月に知人女性に性的暴行を加えた疑いが噴出し、1軍登録を抹消されて3軍の練習に合流した後も、こと打撃となると、若い選手を観察し助言を送ることがあった。

 不祥事を猛省するのは当然として、一方で本塁打王を3度獲得した強打者が語る高いレベルの打撃論が、若手に有益であることは間違いない。若手の1人は「僕の打撃練習をじっと見ていてくれていて、山川さんの方から声をかけてくださりアドバイスをいただくことがありました。僕にとっては今まで聞いたことがないレベルの話で、すごく勉強になりました」と振り返る。

 この日、引き揚げる際には室内練習場の前で約10人、その後ロッカールームのあるメーン球場の前でも約20人のファンから、サインを求められ応じた。「3軍で練習している時も、応援に来てくれているファンの方がいて、サインもできる範囲でしていました。そのたびに『頑張ってね』と言ってもらえたのは、非常にありがたかったです」としみじみ。一方で、ネット上の厳しい声にもあえて目を通している。「シーズン中は見ないようにしていた書き込みを含めて、いろいろな意見を全て受け止めています」。

 5月11日のロッテ戦(ベルーナドーム)以来、5か月ぶりの実戦となるはずだった試合はいきなり雨で流れたが、それでも野球ができる喜びをかみしめた1日だったに違いない。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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