レギュラー逃せば「クビも見えてくる立場」 OBが見た阪神の“変革成功”陰のMVP
阪神OBの野口寿浩氏「木浪が頑張ってくれたから、コンバートは成功した」
阪神は今季、2005年以来18年ぶりとなるリーグ優勝を果たした。2004年から2008年まで、5年間にわたって“岡田監督第1次政権”の下でプレーした野球評論家・野口寿浩氏が2023年シーズンの戦いぶりを見て陰のMVPに挙げたのが、今季遊撃のポジションを掴んだ木浪聖也内野手だった。
岡田彰布監督が就任し、改革の目玉としたのが守備位置のコンバートとポジションの固定。中野拓夢内野手を遊撃から二塁へ、右翼も守っていた佐藤輝明内野手は三塁に、三塁と一塁で併用されていた大山悠輔内野手を一塁で1年間固定させた。この改革は見事成功し、チームはリーグ優勝。野口氏は、コンバート成功のポイントに木浪の存在を挙げる。
「木浪があれだけ頑張ってくれたから、コンバートは成功した。あれで木浪がダメだったら、中野をショートにして、セカンドは糸原、渡邉諒が良かったんじゃないかってなったでしょう。(木浪は)陰のMVPって評価してあげてもいいんじゃないですかね」
木浪は、今春のキャンプで小幡竜平と遊撃の座を争い、開幕スタメンは逃したが、7試合目から「8番・遊撃」で出場。その後は固定され、自己最多の127試合に出場し、規定打席にも到達して打率.267をマークした。
野口氏は「こんなこと言ったらね、木浪とファンの人たちに怒られちゃうかもしれませんが、それを覚悟で言うと……」と前置きし、「今年は必死さが出てきた。前は少し油断を見せるところがあった。今年は一切スキを見せていないですよ」。
掴んだチャンス「小幡にレギュラーを取られてしまったら、クビも見えてくる立場に」
大学、社会人を経ての入団で、今季は29歳。控えには甘んじていられなかった。岡田監督は、就任が決まった昨秋から、中野らをコンバートする意向を明かしていた。「ラストチャンスだと思ったはず。もし年下の小幡にレギュラーを取られてしまったら、クビも見えてくる立場になってしまう」。
木浪は、1年目の2019年に遊撃で98試合に出場。翌2020年も91試合に出場したが、その後は中野の台頭もあって二塁や三塁でもプレーした。昨季は遊撃での出場は7試合に終わっていた。そんな中、中野のコンバートという形で遊撃のポジションが空いたのだった。
チャンスを見事掴み、下位打線から上位打線に繋ぐ重要な役割も果たした。「今年が終わった時に今年は今年、来シーズンは来シーズンと、もう1回最初からやり直すくらいの気持ちがあれば、来年もいけるでしょう」。打力は文句なしの近本光司外野手、中野に加え遊撃に木浪がガッチリとはまった。黄金期を築くための第一歩、重要なセンターラインを確立した1年だった。