半年で飽きられた“戦力外の元プロ野球選手” 仕事ほぼゼロに「人生どうしよう」

元中日の滝野要氏【写真:小西亮】
元中日の滝野要氏【写真:小西亮】

元中日外野手が直面した“元プロ野球選手の賞味期限”

 プロ野球に、戦力外の季節がやってきた。他球団で再起を果たす選手はわずかにいるものの、多くは「元プロ野球選手」の肩書きに変わる。ファンの心には残り続けるが、新陳代謝の激しい世界。その存在は、時の経過とともに薄れていくのも事実。第2の人生に向かう選手たちにとって“最初の壁”として立ちはだかる。

「いま思えば、楽にお金が入ってきていたな、と」

 元中日外野手の滝野要氏は、昨年10月に戦力外になってからの約半年間を振り返る。即座にYouTubeチャンネルを開設。“クビ”という現実をネガティブに捉えず、むしろ逆手にとって等身大の思いを発信していった。初投稿の動画は80万超再生。更新頻度も高く、現役時代の“月収”より高い収益を得た時期もあった。

 YouTubeをきっかけに、多くの仕事も舞い込んだ。講演会で自らの経験を語ったり、企業から“客寄せ役”を任されたり。わずか4年の現役生活で、1軍で放ったのは8安打でも、引退ホヤホヤの「元ドラゴンズ選手」は、東海地方では破壊力があった。

半年で特需終了「プロ野球の新しいシーズンが始まって、みんなの関心が…」

 特需の終わりは、思った以上に早かった。「年が明けて、求められる回数が減って。仕事の量が減りました。1軍で活躍していた選手とかは違うんでしょうが……。自分が求められていないんだなって思った瞬間でもありました」。戦力外から半年が経った春ごろには、仕事の依頼はほぼゼロに。「プロ野球の新しいシーズンが始まって、みんなの関心がそっちにいっちゃったのかなと」。YouTubeでの収入も減り、生活していくには働くしかなった。

「人生どうしようか。何が正解なのか。いろいろやろうと思っても、真剣にやるなら一個しかできない。何をやっていけば……」

 幸いにも方々から働き口の紹介はあった。26歳で迎えた第2の人生。「掃除が好き」との思いから、清掃の仕事を選んだ。都内の会社に弟子入りし、今年9月には正社員となって上京。住人が退去したマンションの原状回復作業に汗を流す。

 ようやく地に足がついた生活を送れるようになったいま、あらためて乱高下の激しかった1年を思う。「周りから求められて調子がいい時って、いつまでも続くもんじゃないと頭では分かっていたんですが、どこかでこのまま続くんじゃないかなという期待もあったな、って」。社会人への脱皮に時間は要したが、きっと無駄にはならないはず。元プロ野球選手という肩書きに執着せず、ありのままの現実と向き合っていく。

(小西亮 / Ryo Konishi)

JERAセ・リーグ

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY