1軍未出場→打率.348…石川慎吾のトレードはなぜ成功? コーチ明かす絶好のタイミング
石川慎吾と金子誠コーチは日本ハム時代同僚→7年弱を経て再び同じチームに
環境の変化が、大きな転機となった。ロッテの石川慎吾外野手は、7月に巨人からトレード加入。それまで1軍出場のなかった“崖っぷち”の30歳は、新天地でレギュラーシーズン44試合に出場して打率.348、2本塁打、10打点、出塁率.381、得点圏打率.474、OPS.837の成績を残し、2位でのクライマックスシリーズ(CS)進出に貢献した。
トレードが発表されたのは7月3日。翌4日にいきなり1軍昇格すると、6日の西武戦に代打で登場して移籍後初打席初安打を放った。移籍前時点で、巨人でイースタン・リーグの打率.358と調子はよかったが、1軍からは一度も声がかかっていない状況だった。とはいえ、いつ故障者が出るか分からない世界。一般的に日本のトレードでは少ない“絶好調時のトレード”となり、石川自身がその勢いを持続してチャンスをつかんだ形となった。
石川と日本ハムでともにプレーしていた縁のある金子誠戦略コーチは言う。「ジャイアンツでも試合に出ていなかったり調子が悪かったときのトレードだったら、うちに来て仮にすぐに使っていてもどうなっていたか分からない。一番打撃の調子がいい時にトレードで来て、スタートがうまくいったからベンチから重宝されて、いい波に乗れましたよね」。トレードとなった選手は2軍で数試合、チームに慣れさせるのが“通例”だが、調子を見据えてのいきなりの起用が奏功した。
対右投手は39打席で打率.297、対左投手は79打席で打率.373。“左キラー”として重宝される。一方でWARは「0.1」、守備の評価指標であるUZRは「-3.1」であることからも、守備に課題を残していることは明白だ。今季の先発出場は左翼が23試合、右翼が2試合、指名打者が3試合。「守備を責めないというか、まだやれば伸びると背中を押している。本人もそれで取り組んでいる。前半戦は投手陣が頑張ってきたチームだったから俺としては守りに目をつむりたくないが、とはいっても点も取れないのでそこは必要としますよね」と金子コーチは明かした。
現役を引退する2014年まで、日本ハムで石川とともにプレー。2016年には打撃コーチと選手という間柄だった。同年オフに石川は巨人に移籍したが、7年弱を経て、今年途中からロッテで再び同じユニホームで戦う。高卒新人時代から知るだけに「人間的には変わっていないけど、ジャイアンツで色々な経験もしただろうし、年相応には落ち着いたよね」と笑う。
百戦錬磨のベテラン選手が多かった巨人とは違い、ロッテは主力にも若手が多い。荻野、角中ら30代後半の選手もいるが、安田、山口、藤原らは20代前半から中盤。「みんな若いから。年齢的にも上の方になるから、そういう自覚もあるでしょう」と金子コーチが話すように、石川自身が自らの立ち位置を見つめていることも成功につながった要因かもしれない。ZOZOマリンに響き渡る「シンゴコール」はすでにファンから愛されている証。CSでもその勝負強い打撃に懸かる期待は大きい。すっかり馴染んだピンストライプで、次なる戦いに挑む。