新庄監督も絶賛「センスある」 万波&野村と同期…ハム23歳・田宮裕涼に漂う覚醒の予感

日本ハム・田宮裕涼【写真:荒川祐史】
日本ハム・田宮裕涼【写真:荒川祐史】

9月22日に1軍初昇格、25日に楽天田中からプロ初アーチを放った

 2年連続最下位に終わった日本ハムだが、楽しみな若手選手は多い。万波中正外野手が最後まで本塁打王争いを繰り広げ、清宮幸太郎内野手や野村佑希内野手への期待も高い。しかしもう1人、忘れてはいけないのが田宮裕涼捕手だ。万波、野村と同期の高卒5年目。新庄剛志監督が「センスありますよ」と絶賛した正捕手候補だ。

 今季はイースタン・リーグで91試合に出場も、1軍初昇格は9月22日とシーズン最終盤だった。しかし同25日の楽天戦で、田中将大投手からプロ初アーチを放つと、28日の本拠地最終戦・ロッテ戦ではマルチ安打をマークし、来季への希望を灯した。

 実はこのロッテ戦前の打撃練習中、新庄監督がアドバイスを送っていた。「ポイントを前にして、バットのヘッドの重さを感じながら打てばポイントが前になってボールがしっかり見える。そう言ったら1球目からカーンって、右中間にヘッドの重さを感じながらパコーンって打って。この子、凄いセンスあるなって」と驚く吸収力を見せたのだ。

 そうして迎えた2回2死二塁の第1打席。種市篤暉投手の初球のフォークにバットを出して中前適時打。4回2死一塁の第2打席は、外角低めのスライダーを左前に運んだ。指揮官は「1打席目、(練習と)同じように打ったんですよ。変化球だったのでちょっと溜めて打って。次の打席、変化球だったらライト前打つよっていう話をしていたらライト前に打った。楽しみな選手の1人ですね」と目を細めた。

今季のスタメンマスクわずか5試合も…強肩武器にアピール

 プロ5年目は10試合の出場で打率.258、2本塁打、9打点。ベビーフェイスでファンの人気も高い23歳は、決して満足のいく成績とはいえなかったが、新庄監督の頭に、そしてファンに、強いインパクトを残したのは間違いなかった。

 2018年ドラフト6位で成田高から入団した田宮。2020年に1軍デビューを果たしたが、2022年の14試合出場が自身最多と、これまでは高卒同期の万波や野村に後れを取っていた。今季も捕手での先発出場は5試合にとどまったが、持ち前の強肩とともに、打撃技術でアピールできれば、一気に正捕手候補に躍り出る可能性も高い。

 今季のチームの捕手事情を見ていると、スタメンマスクはFAで加入した伏見寅威の74試合が最多。次いでこちらも新加入のアリエル・マルティネスが29試合、清水優心が14試合、古川裕大が11試合、郡司裕也が4試合、梅林優貴が1試合だった(シーズン途中で中日に移籍した宇佐見真吾が5試合)。絶対的な正捕手は不在で、台頭を待っている状況だ。

 田宮は現在、宮崎県内で行われているフェニックス・リーグに参戦中で、実戦漬けの秋を送っている。来季3年目を迎える新庄監督は「この世界は結果が全て。来年も今年のような成績であればユニホームを脱ぐという覚悟で、死ぬ気で選手を成長させながら戦っていきたいと思います」と誓いを立てた。勝負の2024年、背番号64が扇の要を担っている可能性は十分にある。

○著者プロフィール
町田利衣(まちだ・りえ)
東京都生まれ。慶大を卒業後、スポーツニッポン新聞社に入社。2011年から北海道総局で日本ハムを担当。2014年から東京本社スポーツ部でヤクルト、ロッテ、DeNAなどを担当。2021年10月からFull-Count編集部に所属。

(町田利衣 / Rie Machida)

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