大谷翔平の行動で「もっと学ぼうと思う」 若手が触発…二刀流がエ軍に残した“金言”

エンゼルス・大谷翔平【写真:Getty Images】
エンゼルス・大谷翔平【写真:Getty Images】

不振のネトに打撃指導、170キロ右腕ジョイスは「彼は学ぶことを怠らない」

 エンゼルスの大谷翔平投手は今季、44本塁打を放ち、日本選手初の本塁打王を獲得するなど、歴史的なシーズンを過ごした。メジャー生活も6年目が終わり、大谷より長くエンゼルスに所属しているのはマイク・トラウト外野手のみに。「僕もまだまだ若いと思っているので。そういう気持ちで頑張りたい」と話していたが、チーム内でも自らの役割を意識している場面がみられた。

 右肘靱帯の手術で一足先にシーズンを終えた9月。大谷のベンチでの行動が話題になった。新人のザック・ネト内野手に身振り手振りでアドバイスした。ネトは9月10日(日本時間11日)に腰痛から復帰したが、そこから6試合で23打数1安打、打率.044と大不振に陥っていた。大谷はそんな新人に「一貫性のあるフォームにすべき」「速球に振り負けないこと」と提言。翌19日(同20日)の敵地・レイズ戦では家族が見守る中で豪快な一発を放った。

 二刀流としての準備はほかのどの選手よりも多い。8月19日(同20日)のレイズとのダブルヘッダーでは、第1戦と第2戦の合間にもグラウンドに現れ投球練習をこなしていた。そんな中でも、チームメートにアドバイスするのは、ただ自分が結果を残すだけでなく、チームとして勝ちたい——。そんな気持ちの表れのようにも見えた。

 大谷の存在に触発された若手も多い。今季メジャーデビューを果たした最速105.5マイル(約169.8キロ)を誇るベン・ジョイス投手は「彼にはやるべきルーティンが毎日決まっていて、全てを記録している。彼はハードワークのお手本のような存在」と話していた。今季、2度目のMVPが確実視されている二刀流だが、グラウンドでは一番の練習をこなす。「既にリーグ最高の投手の1人だけど、学ぶことを怠らない。だから私ももっと(ピッチングを)学ぼうと思うんだ」と意識させられていた。

侍ジャパンの一員として世界一に貢献した大谷翔平(右)【写真:荒川祐史】
侍ジャパンの一員として世界一に貢献した大谷翔平(右)【写真:荒川祐史】

WBCでは使用球に苦しむ松井裕樹にアドバイスも

 大谷のその姿勢は3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)でもあった。投手陣で最後まで苦しんでいたのが、楽天・松井裕樹投手だった。WBCの使用球に合わず、3月3日の中日戦では、2/3回を2安打3四球4失点と打ち込まれた。うつむきがちにベンチに戻る松井に大谷は声をかけた。その時の会話を左腕が明かしてくれた。

「『どう?』と聞いてくれて。色々アドバイスをもらいました。(WBC球はNPB球より)重くて多少大きいため、どうしても腕が遅れがちになる。投球時に前傾することを意識したほうがいいということを教えてもらいました」。WBCでは1試合登板に終わったが、シーズンでは守護神として活躍。39セーブをマークして最多セーブのタイトルを2年連続で獲得した。

 他にも、今季フィリーズで活躍している元エンゼルスのブランドン・マーシュ外野手は「ボールを打つ方向に(膝を)押し出せ」とアドバイスを受けたことを明かした。今季はキャリアハイの打率.277、12本塁打、OPS.830を記録したが、「多分それが一番大きかったかな」。大谷からの“金言”が結果につながっているようだった。

 大谷は今オフFAになり、すでに去就が話題になっている。エンゼルス残留か、他球団への移籍か——。ただ、たとえ大谷が移籍しても、若手が受けた“金言”は本人の心に深く刻み込まれているはずだ。

著者プロフィール
○川村虎大(かわむら・こだい)1998年2月、茨城・土浦市出身。土浦一高から早大に進学。早大では軟式庭球部に所属するかたわら、ソフトテニス専門誌に寄稿。2021年からFull-Countに所属し、2023年は第5回WBCを取材。その後、エンゼルスを中心にMLBを取材している。

(川村虎大 / Kodai Kawamura)

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