阪神ドラ1に備わる“素質” 初CSでも臆せず豪快弾…専門家も驚愕「恐れ入ります」

阪神・森下翔太【写真:矢口亨】
阪神・森下翔太【写真:矢口亨】

ファーストステージ敗退のDeNAには対戦打率.171で最も苦手だった

■阪神 4ー1 広島(18日・甲子園)

 阪神のドラフト1位ルーキー・森下翔太外野手は18日、広島とのクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ第1戦(甲子園)に「3番・右翼」でスタメン出場し、1点ビハインドの4回に左翼席へ同点ソロを放つなど3打数2安打1四球。チームを4-1での勝利に導いた。現役時代に阪神、日本ハムなど4球団で21年間捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏は「第1戦のゲームMVPを選ぶとすれば森下」と称えた。

 相手に1点先制を許して迎えた4回の攻撃。1死走者なしで第2打席に入った森下は、広島先発の九里亜蓮投手に対し、粘りに粘った挙句フルカウントからの9球目、外角のスライダーをフルスイングし、ライナーで左翼席へ放り込んだ。「それまでは公式戦全日程終了から中13日空いていた阪神より、CSファーストステージ連勝で勢いに乗る広島の方が主導権を握っていました。しかし、あの1発で雰囲気がガラリと変わりましたね」と野口氏は指摘する。

 初回の第1打席も、得点にはつながらなかったものの、2死走者なしで九里から三塁線を破る二塁打。野口氏の見立てでは、活躍の背景には3つの要因があった。「広島との相性、フェニックス・リーグでしっかり状態を上げてきたこと、それに大舞台に臆することのない度胸です」。

 今季トータルでは94試合に出場し、打率.237、10本塁打、41打点だった森下だが、広島戦に限ると打率.328(61打数20安打)、3本塁打、14打点でセ・リーグの相手球団別では断トツ。特に九里には対戦打率6割(5打数3安打)と相性抜群だった。対照的に、DeNA戦は打率.171(76打数13安打)、1本塁打、8打点と最も苦手にしていたから、ファーストステージで広島がDeNAを破り勝ち上がってきたことは、森下にとって幸運と言えるかもしれない。

木浪の“つなぎ”も注目「勝利の立役者をぜひもう1人挙げておきたい」

 また、森下はシーズン終盤、9月14日にチームが優勝を決めた後は、打率.182(55打数10安打)と振るわなかった。ストライクに手が出ず、ボール球を振らされる悪循環に陥ったことも。それでもCS直前に「みやざきフェニックス・リーグ」に参加し、実戦で調子を上げてきた。「ボールになる変化球を見極め、9球目まで持ち込んでの本塁打だったところが、状態が上がっている証拠です。もともと、人一倍強くバットを振れるところが魅力の打者ですから、選球眼が加われば結果が残るのは当然です」と野口氏はうなずいた。

 さらに初体験のCSで第1、第2打席に快打を連発するあたり、並の度胸ではない。野口氏は「7回1イニングを3者連続三振に抑えた2年目の桐敷(拓馬投手)もそうですが、最近の若い選手は肝が据わっている。恐れ入ります」と脱帽する。

 ちなみに、野口氏は「もし誰もほめる人がいなかったら残念すぎるので、勝利の立役者をぜひもう1人挙げておきたい」と付け加えた。「8番・遊撃」で出場した木浪聖也内野手のことだ。1-1の同点で迎えた5回1死一塁の場面で右前打を放ち、一、三塁にチャンスを広げて、続く9番打者・村上頌樹投手の勝ち越し二塁打、近本光司の2点タイムリーへつなげた。忘れられがちの安打だが、野口氏は「木浪の“つなぎ”があったからこその3得点です」と強調するのだ。

 いずれにせよ、ルーキーの1発で勢いに乗った猛虎。真剣勝負から遠ざかっていた試合勘も、もう心配はないだろう。レギュラーシーズンで2位の広島に11.5ゲーム差をつけた実力を、短期決戦でも見せつけることになるか。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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