広島が陥る疑心暗鬼…ダメージを与えた岡田采配 阪神OBも驚き「誰もがバントを予測」

阪神・岡田彰布監督【写真:荒川祐史】
阪神・岡田彰布監督【写真:荒川祐史】

阪神OBも采配に驚き…同点で迎えた5回1死一、三塁「誰もがバントを予測」

■阪神 4ー1 広島(18日・甲子園)

 阪神は18日、広島とのクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ第1戦(甲子園)に4-1で勝利。ここぞの場面で、現役最年長指揮官の岡田彰布監督の“神采配”が光った。現役時代に21年間捕手として活躍し、阪神時代に岡田監督の下でも5年間プレーした経験を持つ野球評論家の野口寿浩氏が分析した。

 1-1の同点で迎えた5回。広島先発の九里亜蓮投手を攻め、1死一、三塁の好機に、打順は9番の村上頌樹投手に回った。一塁走者を二塁へ送るバントが予想されたところだ。しかし左打席に立った村上は、初球の内角低めのチェンジアップを迷いなく振り切り、一塁線を抜く勝ち越し適時二塁打。二塁ベース上で思わず両手を挙げて万歳した。

「誰もがバントを予測したと思いますが、あれこそ岡田監督の面目躍如。私の現役時代にも、ああいう作戦が的中することが何度もありました」と振り返る野口氏は、現役時代にヤクルト、日本ハム、阪神、横浜(DeNA)でプレーし、阪神では6年間のうち5年間(2004~08年)が岡田監督。2005年にはリーグ優勝を果たしている。

 相手の意表を突く作戦こそ、岡田監督の真骨頂。その上で野口氏は「あの回、1死から坂本(誠志郎捕手)の死球、木浪(聖也内野手)のヒットで一、三塁となり、押せ押せの雰囲気だったこと。それに村上の打撃が投手にしては比較的いいことが、背景にあったと思います」と付け加えた。

 確かに、どんな奇襲も、試合の流れを無視したものであっては成功はおぼつかない。村上はプロ入り後レギュラーシーズンでは打点こそ挙げたことがないが、今季6安打(44打数、打率.136)をマークしている。それにしても、併殺打のリスクもあっただけに、思い切った作戦だったことは確かだ。

第2戦以降に与える影響も「広島首脳陣はいろいろケアしないと」

 今年、岡田監督が投手に打たせて広島ベンチの度肝を抜いたのは初めてではない。9月9日、この日と同じ甲子園での対戦。1-0とリードして迎えた2回1死一、三塁の場面で、大竹耕太郎投手が打席に入り、森下暢仁投手に対してカウント2-1からバスターで左翼線適時二塁打。貴重な追加点を挙げている。

「9月の大竹のバスターもあっただけになおさら、カープの首脳陣は第2戦以降、いろいろなことをケアしなければならなくなりました」とも野口氏は指摘する。初戦で奇襲を成功させたことによって、第2戦以降に似たような場面で、相手を疑心暗鬼にさせプレッシャーをかけることができるわけだ。

 打撃で岡田采配に応えた村上は、投げても6回まで101球を要しながらも、秋山翔吾外野手の犠飛による1失点に抑え、バトンをリリーフ陣に渡した。野口氏は「シーズン中に比べるとカットボールの曲がりが大きすぎ、うまく制球できなかった分、球数を要しましたが、よく粘りました。ストレートにキレがあったことが抑えられた要因だと思います」と評した。作戦が的中した阪神が、心理的優位を強めて第2戦以降に臨む。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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