最速150キロ、侍U18逸材は「今までで一番」 プロ5人輩出の恩師が絶賛も…ぬぐえぬ不安
霞ヶ浦高の150キロ右腕・木村優人、今夏の苦い経験から不安がよぎる日々
「正直、不安な気持ちが大きいです」。26日のドラフト会議を目前に、茨城・霞ヶ浦高の木村優人投手は率直な気持ちを打ち明ける。高校日本代表「侍ジャパン」に選出され今夏の「U-18W杯」優勝にも貢献した最速150キロ右腕。同校の高橋祐二監督は「今まで見た投手の中で一番」と評価するが、NPBは甘くない世界。そう自分に言い聞かせている。
185センチの長身で、力感のないフォームから最速150キロの直球とカットボール、スプリットなどを投げ分ける。同校はこれまで広島・遠藤淳志投手ら5人の投手をプロの舞台に送り込んでいるが、高橋監督は「全てにおいて一番じゃないですかね。スピード、制球力、変化球の質」。入学時から「モノが違うな」と感じていたという。
そんな木村だが、取材では何度も「不安」という言葉を口にした。忘れられないのが最後の夏。土浦日大と対戦した今夏の茨城大会決勝では、甲子園まであと3アウトまで来ていた。「やらなきゃいけないっていう気持ちより、打たれたらどうしようっていう気持ちが先走ってしまった」。まさかの7安打5失点を許し逆転負けで涙を飲んだ。
「最後ああいう形で負けてしまって。 評価が自分の中では気になるところでした。そういうところから不安は来ているのかなと思います」
そんな木村にも挽回のチャンスが巡ってきた。最後の夏が終わってから1週間後、日本代表内定の知らせが届いた。そこで出会ったのが世代ナンバーワンの呼び声も高い大阪桐蔭高・前田悠伍投手だった。「引き出し、アイデアの多さ。試合が終わっても、バッテリーで会話する場面が何度もありました」。振り返ると、木村自身は苦しい場面では常に独りよがりの野球をしていた。夏の大会ではサインに首を振り、得点を許したこともあった。前田が何度も捕手と意思疎通を図って投げ込む姿を見て、「学ぶところが多かった」と振り返る。
同校OBの元プロから学んだ厳しさ「高校野球とはまた全然違う」
3兄弟の三男として生まれ、兄は2人とも霞ヶ浦高野球部出身。自身も同校を目指すのは必然だった。広島の遠藤は、長男・翔大さんの幼馴染。家も近所で中学時代によくキャッチボールをしてもらっていたという。「自分の憧れの選手がプロで活躍して『自分もプロに行ってやってやるぞ』って気持ちが強くなりました」。
高校では、元広島の右腕・鈴木寛人投手からのアドバイスも自分を見つめるいい機会になった。鈴木は同校から2019年ドラフト3位で広島に入団したが、わずか2年で戦力外通告を受け、現在は選手とともに寮で生活し、指導しながら自らも練習に励んでいる。
「プロのバッターはこうだとか、変化球の投げ方だとかを教わるだけでなく、プロは厳しい世界で高校野球とはまた全然違うということも教わりました。もう1つ2つ、レベルが上がる中で、結果が出ないとクビになる場所。自分がどうしなくてはいけないのかを考えるようになりました」
華々しくも厳しくもあることを分かっているからこそ出てくる「不安」。それでもプロ野球志望届を出さないという選択肢はなかった。「1番レベルの高いプロ野球で勝負したいっていう気持ちは変わらなかったので。少しずつ、不安から期待に変わっている部分もあります」。最後の大会が終わった後も練習にも参加し、体重も4キロ増やしたという。不安を減らすためにも、鍛錬は怠らない。