CS7打席無安打→劇打呼ぶ二塁打を放てた理由 専門家が見た、阪神4番“表情の変化”
野口氏「4番が打ったとあって、雰囲気が一気に盛り上がりました」
■阪神 2ー1 広島(19日・甲子園)
阪神は19日、クライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ第2戦(甲子園)で広島にサヨナラ勝ち。レギュラーシーズン優勝のアドバンテージを含めて3勝0敗とし、9年ぶりの日本シリーズ進出に王手をかけた。1-1の同点で迎えた9回2死満塁の好機に、木浪聖也内野手が右前適時打を放ち試合を決めたが、現役時代に日本ハム、阪神など4球団で捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏は、大山悠輔内野手が右中間二塁打でチャンスメークした点を、勝敗を分けたポイントと見た。
同点の9回、1死走者なしで打席に入った大山は広島の守護神・栗林良吏投手に対し、カウント1-1から外角高めに浮いた143キロのカットボールをとらえ、打球を右中間へ運ぶと一気に二塁を陥れた。CSに入ってから7打席ノーヒット(6打数無安打1四球)だった大山が、初めて「H」ランプを灯した瞬間でもあった。
「4番が打ったとあって、雰囲気が一気に盛り上がりましたし、一気に二塁まで行けたのも大きかった」と野口氏。続く佐藤輝明内野手は空振り三振に倒れたが、シェルドン・ノイジー外野手の申告敬遠、坂本誠志郎捕手の四球、木浪のサヨナラ打へとつながっていった。
もっとも、大山はこの日それまでの3打席は、広島先発の大瀬良大地投手に対し、初球を打って遊ゴロ、カウント0-1から2球目を二ゴロ、初球を一邪飛とからきしだった。「若いカウントから積極的に打っていったのは、岡田(彰布)監督の指示だったのだと思いますが、第1打席はストレートに全くタイミングが合っていませんでした。第2打席は変化球狙いだったと思いますが、初球に甘いコースのストレートを見逃し、2球目に難しい外角低めのカットボールに手を出し二ゴロと、悪循環にはまっていました」と野口氏は見ていた。
大山はレギュラーシーズンで栗林に4打数3安打1四球だった
その大山が、ここぞの場面でチャンスメークできたのはなぜか。「相手投手が今季得意としている栗林だったことも理由の1つではないでしょうか。あの打席の大山は、表情に落ち着きが戻ったように見えました」と野口氏は言う。大山は今季栗林を4打数3安打1四球と圧倒していたのだ。
「長いシーズンオフの間に対策を練り、シーズンが替わった場合とは違い、レギュラーシーズンからCSに替わったからといって、相性がリセットされることはありません。打者は得意としている投手を飲んでかかることができる。そうなると、この日の栗林のカットボールが高めに浮いたように、投手側の失投も増えるものです」と野口氏は解説した。
レギュラーシーズン全143試合で4番を張った大山が初ヒットを記録し、息を吹き返したことは、チームに与える好影響が大きい。あとは今季最多安打のタイトルを獲得した中野拓夢内野手が、依然としてCS8打数無安打3三振であることだけが気がかりだが、野口氏は「第2打席の痛烈な右直に、復調の兆しが見えました」と指摘する。
独走でペナントレースを制した阪神が、シーズン中通りの戦いぶりで着実に日本シリーズに近づいていく。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)