「俺は打てる」圧倒的な強さ「444」が生んだ自信 星野阪神を彷彿の“黄金パターン”

阪神・木浪聖也【写真:矢口亨】
阪神・木浪聖也【写真:矢口亨】

8番の木浪が、1-1の同点で迎えた9回2死満塁で右前へサヨナラ打

■阪神 2ー1 広島(19日・甲子園)

 阪神は19日、広島とのクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ第2戦(甲子園)に2-1でサヨナラ勝ち。「8番・遊撃」でスタメン出場していた木浪聖也内野手が、1-1の同点で迎えた9回、2死満塁で広島の守護神・栗林良吏投手から右前適時打を放ち試合を決めた。阪神はアドバンテージを含めて3勝0敗とし、9年ぶりの日本シリーズ進出へ王手をかけた。現役時代に日本ハム、阪神など4球団で捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏によると、木浪が決めたところが今季の阪神の強さを象徴していたという。

 カウント1-2と追い込まれながら、栗林のフォークが高めに浮いたところを逃さなかった。木浪が一閃した打球は一、二塁間を真っ二つにし、甲子園を歓喜のるつぼに変えた。今年のレギュラーシーズンでも、満塁では打率.444(18打数8安打)、1本塁打19打点と圧倒的な強さを誇っていた。お立ち台では「(満塁では)打てる気がします」と言い切り、大歓声を浴びた。

 野口氏は「僕も現役時代にリーグトップの得点圏打率をマークした年がありました(日本ハム時代の2000年)が、あの年は走者が二塁か三塁にいると、『俺は打てる』という気持ちで打席に立つことができました。そういう意味で木浪も、あの場面で精神的にゆとりがあったのだと思います」と解説する。

2003年にリーグ優勝した星野阪神にもいた“恐怖の8番”

 打順は下位であっても、レギュラーシーズンでも木浪の存在感は絶大だった。野口氏が「陰のMVP」に挙げるほどだ。中野拓夢内野手が二塁へコンバートされた後を受けて、遊撃のレギュラーに定着。規定打席をクリアし、リーグ14位の打率.267をマークした。得点圏打率.310の勝負強さも見せ、「恐怖の8番」の異名も取った。今季唯一の本塁打が、8月26日の巨人戦(東京ドーム)で放った満塁弾だったのも劇的だった。

 野口氏は「8番の木浪がチャンスメークし、リーグトップの得点圏打率(.374)を誇った1番の近本(光司外野手)が返すのが、今季の阪神の得点パターンの1つでした」と指摘。さらに「僕が阪神で現役だった2003年、星野仙一監督の下でリーグ優勝した時も、8番の藤本(敦士内野手=当時)が打率3割(.301)をマークしました。優勝するチームは、下位打線にも怖い打者がいることが多いです」とも語る。

 お立ち台では「明日(日本シリーズ進出が)決まりますけど……足の震える応援をよろしくお願いします」と自信満々に言い放った木浪。初体験のCSでも2試合で打率5割(6打数3安打)となり、広島にとって、さらにはこのままいけば日本シリーズでの対戦相手にとっても、大きな脅威となりそうだ。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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