開幕戦の守護神起用は「まさかでした」 痛恨被弾を糧に…難役に挑むレオ23歳の“強心臓”

西武・青山美夏人【写真:矢口亨】
西武・青山美夏人【写真:矢口亨】

開幕戦での守護神起用で被弾した西武・青山美夏人…申し訳なさで眠れず

 3月31日に本拠地ベルーナドームで行われたオリックスとの2023年シーズン開幕戦で、1点リードの9回にプロ初登板し、2死走者なしから森友哉捕手に同点ソロを被弾。チームは敗戦し、ほろ苦いプロデビューとなった西武の青山美夏人投手。「あの時のことは、けっこう聞かれます」。そうはにかみながら、試練のスタートとなったルーキーイヤーを振り返った。

 亜細亜大から2022年ドラフト4位で入団。オープン戦では5試合に登板し、計5イニングを無失点に抑えていたが、開幕戦での守護神起用は想像していなかった。

「1年目なので『まさか』という感じでした。でも『自信を持っていけ』と言われて、その気になって投げたんですけど……。2アウトはリズムよく取れて、そこでほっとしてちょっと安心してしまったのかなと思います。打たれた瞬間は『うわー』みたいな感じで、真っ白になりました」

 大事な開幕戦を落としただけでなく、先発して8回を1失点に抑えていた高橋光成投手の勝ちを消してしまったが、試合後に「結果はコントロールできない。また明日から頑張ろう」と高橋からメッセージをもらい、少し気持ちが落ち着いた。夜は眠ることができなかったが、チームが連敗した翌日の夜のほうが眠れなかった。「自分が連敗のきっかけをつくってしまい、申し訳ない気持ちでした」。だが、3戦目の4月2日に再び9回に登板し、プロ初セーブを挙げた。「同じ相手でリベンジしたいと思っていたので、チームの今季初勝利に貢献できて、ほっとしました」。

西武・青山美夏人【写真:小林靖】
西武・青山美夏人【写真:小林靖】

来季は先発でも救援でも「ポジションをつかんで、怪我なく」

 大学時代は先発を務めていたが、今季は主に中継ぎで39試合に登板、0勝1敗3セーブ、1ホールド、防御率2.96の成績を残した。クローザーを任された試合については、「抑えは『しんどいな』と思うときはあります。雰囲気がやっぱり違う。何回か投げましたが、まだ慣れません。いろいろなものが詰まっていますから」と、難しさを感じている。豊田清投手コーチには、通算194セーブを誇る守護神の増田達至投手をよく見ておくようにと言われている。

「8回くらいまでは普通なんですけど、『行くぞ』って言われてから、すぱっと切り替えてモードに入る。肩もすぐに作って。自分は何球も投げちゃうし、無理だなと思いました。一度『増田さんて緊張するんですか』と聞いたら、『緊張してるように見えるだろ』と言っていました。『確かに』と思いました。毎試合すごいなと思います」

 先輩から多くを学ぶ毎日だが、春季キャンプでもOBの松坂大輔氏からアドバイスをもらう機会があった。「最初に買ったグローブが松坂さんモデルで、ずっと見ていたので僕の中ではスーパースターです。その松坂さんがキャンプに来られていて『うわー』ってなりました」。緊張しながらも、スライダーについて聞くことができ「今はいい感じになじんできました」と笑顔を見せる。

 開幕戦で1球の怖さを知り、四球が増え失点につながることもあった。だが、シーズン後半には修正し、10月2日の敵地ZOZOマリンスタジアムでのロッテ戦では自己最長の3イニングを投げ、無安打無失点、5三振を奪った。

「来年は先発かリリーフかわかりませんが、先発だったらローテーションで、しっかり自分のポジションをつかんで、1年間怪我なくやれたらと思います」

 中学生の時からずっと丸刈りだったが、今は美容院に通っている。「丸刈りじゃないのは小学生以来です。すごく新鮮です」。穏やかな語り口で話すが、マウンドでの気持ちの強さが持ち味だ。「『あの開幕戦があったから、今がある』というくらいにならないといけないと思っています」。衝撃的だったデビュー戦での思いを胸に刻み、23歳の右腕は成長を遂げる。

(篠崎有理枝 / Yurie Shinozaki)

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