メジャー107発男が内野全ポジション出場 打率.217でも…欠かせない“縁の下の力持ち”

ソフトバンク・川瀬晃(左)と楽天・小深田大翔【写真:小林靖】
ソフトバンク・川瀬晃(左)と楽天・小深田大翔【写真:小林靖】

ハム4年目の細川は内野4ポジションに加えて外野も守った

 複数のポジションをこなせるユーティリティプレイヤーの存在は、チームにとって大きなプラスをもたらす要素となっている。今回は、レギュラーシーズンにおいて3つ以上のポジションで出場した選手たちを球団ごとに紹介。ユーティリティとしてチームを支えた選手たちの顔ぶれを振り返るとともに、働きぶりをあらためて確認していきたい。

○日本ハム

 高卒3年目の細川凌平が内野4ポジションに加えて外野もこなし、バッテリーを除く幅広い役割に対応。9月は月間打率.375とインパクトを残しており、さらなる台頭にも期待がかかる。今季限りで現役を引退した谷内亮太も例年通りに内野の全ポジションをこなし、現役最後のイニングで外野を守って有終の美を飾った。新戦力の山田遥楓が内野の全ポジション、助っ人のアリスメンディ・アルカンタラも内野3ポジションと外野でプレー。新人の奈良間大己、逆輸入ルーキーの加藤豪将、2年目の水野達稀、捕手登録の郡拓也、ベテランの中島卓也の5人が、いずれも内野の3ポジションをこなした。

 野村佑希は従来の主戦場だった三塁と一塁に加え、外野と二塁でも試合に出場。打率.236、OPS.692と打撃面では苦しいシーズンを送ったが、守備では新境地を開拓している。シーズン途中の入団で捕手、一塁、二塁、外野の4ポジションをこなした郡司裕也も含めて、打線の核になりうる選手のユーティリティ性の拡充は明るい材料だ。

〇楽天

 プロ8年目で自己最多の98試合に出場した村林一輝は、1シーズンで内野の全ポジションを経験。とりわけ遊撃手として見せたハイレベルな守備は特筆もので、打率.256とバッティングでも活躍。攻守にわたって躍動し、主力選手の一人へと成長を遂げた。小深田大翔は内外野の4ポジションをこなしながら、36盗塁で自身初タイトルとなる盗塁王を受賞。守備では計15失策と苦戦も強いられたが、チーム事情に応じて複数のポジションをこなしながら、今季もレギュラーとしてチームを支えた。

 新戦力の阿部寿樹は内外野の3ポジションを守り、打率.255、OPS.738と随所で存在感を示した。移籍2年目の伊藤裕季也も内野の全ポジションをこなしながら自己最多の87試合に出場し、打率.245と奮闘。さらに、山崎剛、渡邊佳明、黒川史陽も3つのポジションに対応するなど、複数の守備位置に適応した選手は多かった。

西武新人の児玉は源田の故障離脱時に台頭…即戦力として存在感

○西武

 呉念庭、平沼翔太、山村崇嘉の3人が、いずれも内野の全ポジションで出場。呉は過去2シーズンに比べて出場機会を減らしたが、打撃面で一定の存在感を示した平沼、シーズンの最後に2試合連続本塁打を放った山村は、今後が楽しみな存在となっている。日本ハムからトレードで古巣に復帰した佐藤龍世は、本職の三塁に加えて一塁と二塁も守り、2軍では捕手としても出場。打率.263、OPS.768を記録して終盤戦では3番打者を務めるなど、攻守にわたって成長を垣間見せた。

 また、源田壮亮がワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で右手小指を骨折したことを受け、新人の児玉亮涼が序盤戦に台頭。遊撃を中心に二塁と三塁もこなし、即戦力として存在感を示した。そして、山野辺翔も内外野の3ポジションでプレーし、代走や守備固めのピースとなった。

○ロッテ

 昨季途中から出場機会を増やした茶谷健太が、今季は年間を通して1軍に帯同。内野の全ポジションをこなしながら自己最多の79試合に出場し、打率.284と活躍。序盤戦では4番も務めるなど幅広い役割に対応し、チームに欠かせないスーパーサブへと飛躍を遂げた。池田来翔は1年目の2022年に打率.091と大苦戦を強いられたが、今季は5月に打率.373と大活躍。絶好調時に右手薬指を骨折する不運もあって40試合の出場にとどまったが、打率.269、OPS.731と大きく成績を向上させて確かな成長を示した。

 小川龍成は元々二遊間を主戦場としていたが、1軍の外野手に離脱者が続出したことを受けて外野守備に挑戦。二塁、三塁、外野の3ポジションをこなし、代走としてもたびたび好走塁を披露。持ち前の俊足にユーティリティ性が加わり、大いに活躍の場を広げた。

ソフトバンク周東&牧原の「WBC組」も複数ポジションで存在感

○オリックス

 MLB時代にバッテリー以外の全ポジションをこなしながらレギュラーとして出場する「スーパーユーティリティ」として通算107本塁打を放ったマーウィン・ゴンザレスは、NPBでも内野の全ポジションで出場。打率は.217だったが強肩と球際の強さを随所で発揮した。2年目の野口智哉も外野を中心に三塁と遊撃でもプレーし、着実に出場機会を伸ばした。長年にわたってユーティリティとして活躍してきた山足達也は今季も内野の全ポジションをこなし、与えられた出番で自らの役割を果たした。

 安達了一は二塁を中心に3つのポジションをこなし、9月9日には遊撃手として山本由伸投手のノーヒットノーランをアシストする好守を披露。5月にトレードで加入した廣岡大志は打率.200と打撃面では振るわなかったが、一塁、二塁、三塁、外野と4ポジションで起用されて利便性を示した。

○ソフトバンク

 周東佑京は二塁、三塁、外野をこなしてチームを支えたが、今季は外野での出場機会が大きく増加。36盗塁で自身2度目の盗塁王を獲得し、外野守備でも圧倒的な脚力を活かしてファインプレーを見せるなど、攻守にわたって大きな存在感を示した。周東と同じく3月のWBCに出場した牧原大成は、二塁と外野を中心に4ポジションで出場。故障の影響で91試合の出場にとどまったが、WBCの疲労もあるなかで打率.259と一定の数字を残し、離脱者が続出するチームを支えた。

 川瀬晃は内野の全ポジションをこなしながら、自己最多の102試合に出場。シーズン最終盤には2番打者としての起用も増え、ブレイクの足がかりをつかんだ。二塁、三塁、遊撃、外野を務めた野村勇も含め、複数ポジションをこなせる若手の台頭は楽しみな要素だ。

 ゴンザレスはMLB時代と同じく日本球界においてもユーティリティとして活躍し、小深田と周東は盗塁王のタイトルを分け合った。この3人のように、複数のポジションを守りながら主力として活躍を見せる選手は、チームの戦術の幅を広げる意味でも重要な存在となる。また郡司、茶谷、川瀬のように、スーパーサブとして攻守にわたって幅広い起用に応えた選手たちも、チームの大きな助けとなる。今回取り上げた選手たちのような、一人で複数ポジションをこなしながらチームに貢献する選手たちの活躍に、来季以降もぜひ注目してみてはいかがだろうか。

(「パ・リーグ インサイト」編集部)

(記事提供:パ・リーグ インサイト

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY