スカウトも悩む“他球団の指名予想” ドラフト前日の思惑…1位指名公表が減ったワケ

DeNA・三浦大輔監督【写真:荒川祐史】
DeNA・三浦大輔監督【写真:荒川祐史】

DeNA進藤部長「いい投手が多く、誰を1番に評価するかは非常に難しい」

 12球団中9球団が前日までに1位指名を公表する異例の展開となった昨年とは違い、今年のドラフト会議は事前の公表が減少した。背景には、大学生投手を中心に即戦力として期待できる選手の数が多く、各球団の間で虚々実々の駆け引きが繰り広げられている事情があるようだ。

 たとえば、DeNAはドラフト前日の25日、横浜市内の球団事務所でスカウト会議を開催した。終了後に進藤達哉チーム統括本部長補佐兼スカウト部長が報道陣の取材に応じたが、「決まっていないものは公言できない」と1位指名の事前公表はなし。「1位は即戦力になりうる選手になると思います。投手は右腕と左腕を2~3人ずつ、野手も2人、もしくは3人というところまで絞り込みました。例年より少し多めに(1位候補が)残りましたが、一晩寝て、皆さんの報道を参考にして、会場に入ってから最終決定します」と語った。

 即戦力の投手と言えば、右腕では広島が1位指名を公表した青学大・常廣羽也斗投手、同・下村海翔投手、中大・西舘勇陽投手、亜大・草加勝投手ら。左腕では西武が1位指名する國學院大・武内夏暉投手、最速158キロの東洋大・細野晴希投手、桐蔭横浜大・古謝樹投手らの評価が高い。即戦力野手ではENEOS・度会隆輝外野手、明大・上田希由翔内野手、慶大・廣瀬隆太内野手らが1位候補に挙がっている。

 全体的に、事前に1位指名を公表する球団が減ったのはなぜか。進藤部長は「それだけ悩ましいレベルで(多数の1位候補が)揃っているということだと思います。特に投手は非常にいい選手が多く、それぞれ特長が違う。高校生にも、早い段階で(1軍に)出てくる期待を持てる投手がいる。誰を1番に評価するかは非常に難しい」と指摘する。ギリギリまで熟考を要する球団が多いようなのだ。

気になる他球団の動向、1位指名が競合した場合の競争率

“1本釣り”が可能な選手は誰か、競合するにしても競争率が高くなりそうなのは誰なのか。情報を収集し、他球団の動向を読む作業も今年は重要になりそうである。進藤部長は「球団の評価が最優先ですが、仮に競合になって外れた場合にどういう選手が残るのかは、どの球団も考えるのではないでしょうか」とうなずいた。この日のスカウト会議でも「各球団の指名がどう予想されるのかというシミュレーション」に時間を割いたと言う。

 昨年事前に公表する球団が多かったのは、突出した選手が少なく、他球団を牽制して、できる限り競合を回避したい思惑があったためと言われた。“豊作”の今年は選択肢が多いからこそ、よりよい指名を行うため、あらゆるパターンを想定して指名戦略を練る球団が多いというわけだ。

 一方、三浦大輔監督は「(1位指名を公表しない方が)駆け引きがあったりして、面白いのではないですか? ファンの楽しみ方の1つだと思います。全球団が事前に公表したら、ドラフトがこれほど盛り上がるかどうか、ということもある」と別の観点から見解を述べた。今年は一ファンとして見る分には、例年以上にワクワクするドラフトとなりそうだ。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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