指名漏れで「声掛けられず」 無言の車から3年…涙のドラ1指名に元燕の父も万感
DeNAドラ1・度会の父はヤクルトで15年間の現役生活を送った博文さん
2023年の「プロ野球ドラフト会議 supported by リポビタンD」が26日に行われ、ENEOSの度会隆輝外野手が3球団競合の末にDeNAから1位指名を受けた。指名漏れを経験してから3年。涙を流して喜んだ度会だが、その思いは家族も同じだ。元ヤクルトの父・博文さんも万感の表情だった。
1993年ドラフト3位でヤクルト入りし、内外野守れるユーティリティプレーヤーとして、チームに欠かせないムードメーカーとして、2008年まで15年間の現役生活を送った博文さん。「3球団も指名していただいて感謝しかないです」と無数のフラッシュを浴びる次男を、会見場の片隅で誇らしげに見守っていた。
“あの日”のことは、博文さんも忘れることはない。度会は横浜高3年時にプロ志望届を提出するも、名前が呼ばれることはなかった。学校に駆け付けていた家族にとっても失意の瞬間。苦い記憶をたどった。
「本人が一番悔しかったと思うんですけど、僕の方も悔しさはあって……。今日ここに来るまでの間、あの時の横浜高からの帰りのことをふと思って、3年経ったんだなと思いながら来ました。(隆輝が)すぐに声も掛けられないくらい落ち込んでいたので、家に着いたくらいで一言二言掛けたのを思い出しましたね」
同一リーグに「複雑っちゃ複雑。どっちも応援したい」
それでもENEOSで自分を磨き、走攻守でレベルアップして“ドラ1”まで成長した。「たまに試合を見に行って、成長しているなと感じたりしていました。3年間……あっという間に来たかなと思います」と博文さんは感慨深げだった。
しかし現在はヤクルトアカデミーのヘッドコーチを務めており、いわば同一リーグのライバルチームとなる。「複雑っちゃ複雑」と本音をのぞかせながらも「どっちも応援したいと思います」と笑った。
度会は「ずっと憧れ」という父へ、「いつかお父さんの言葉で『隆輝、俺を超えたな』と言ってもらえたら一番幸せですし、親孝行かなと思うので頑張りたい」と誓った。すると博文さんはすかさず「非常にありがたいんですけど、目標をもっと高く置いてもらって(笑)。超一流プレーヤーに呼ばれる選手に育ってもらえればと思います」と願った。
「元気を出してはつらつとプレーするのがセールスポイントなので、全力で頑張りたい。度会を見ると幸せな気持ちになると思ってもらえるように」と度会。天性の明るさは親譲りだろう。無言だった帰りの車から3年。家族4人が最高の笑顔を輝かせた。
(町田利衣 / Rie Machida)