巨人右腕は「よく下位で獲れた」 活躍目立った4球団…専門家が振り返る1年前のドラフト
中日・松山晋也の奮闘が12球団の育成選手に与えた勇気
「2023 プロ野球ドラフト会議 supported by リポビタンD」は即戦力と期待される選手が目白押しで盛り上がったが、ここで1年前の2022年のドラフトを振り返ってみたい。もちろん、1年目の成績だけで成功・失敗を論じることはできないが、今季ルーキーが戦力アップをもたらした球団はどこだっただろうか。
現役時代にヤクルト、日本ハムなど4球団で21年間捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏は「将来性を見込んで高校生の指名を重視した球団もありますから、1年だけで成果を比較することはできません」とした上で、「今季新人の活躍が目立ったという意味では、セ・リーグでは巨人、中日。パ・リーグでは楽天、西武あたりでしょうか」と言う。名前の挙がった4球団は全て今季Bクラス。「チーム事情でルーキーを使わざるをえなかった面もありますが、それにしても健闘した選手が多かったと思いますよ」と評した。
巨人は1位の浅野翔吾外野手が高卒1年目にして24試合に出場、打率.250(40打数10安打)、1本塁打をマークしたのをはじめ、支配下で指名した5人全員が1軍デビューを果たした。育成1位の松井颯投手も5月に支配下登録を勝ち取り、1軍でも先発3試合を含む8試合に登板し1勝1敗2ホールド、防御率3.26と爪痕を残した。
「今年の巨人にとって欠かせない活躍をしたのが、4位の門脇(誠内野手)と5位の船迫(大雅投手)ですよ。いま思えば、よく下位で獲れたものです」と野口氏。門脇はベテランの坂本勇人内野手の故障離脱中に、代役の遊撃手として抜群の守備力を披露。坂本の三塁転向を促し、阿部慎之助新監督が指揮を執る来季もレギュラーのショートとして計算されている。船迫も貴重な中継ぎとして36試合3勝1敗、防御率2.70と出色の働きだった。
中日では育成1位で入団した松山晋也投手が6月に支配下登録されると、1軍でも最速156キロのストレートと落差のあるフォークを武器に、36試合1勝1敗、防御率1.27と奮闘。シーズン終盤には“勝ちパターン”の1人として主に8回を担ったほど。野口氏は「12球団の育成選手たちに“自分次第でチャンスはある”と勇気を与えた意味でも、価値のある活躍だったと思います」と称えた。
楽天3位・渡辺翔太は「新人王争いで山下舜平大を脅かす」
6位の田中幹也内野手は、身長166センチの小柄ながら3月の侍ジャパンとの強化試合などで好守に活躍し、開幕1軍をほぼ手中にするも、オープン戦で右肩を脱臼。1軍出場なしに終わったが、来季の“出直しデビュー”が楽しみだ。2位の村松開人内野手は二塁、遊撃を守って98試合に出場し、存在感があった。4位の山浅龍之介捕手も1軍7試合に出場し、野口氏は「高卒の捕手が1年目から1軍出場に漕ぎつけただけでも大したもの」と目を細める。
楽天は3位の渡辺翔太投手が、中継ぎで51試合に登板してチーム2位タイの8勝(3敗)を挙げ、防御率2.40の好成績。野口氏は「新人王争いでオリックス3年目の山下舜平大(投手=16試合先発9勝3敗、防御率1.61)を脅かす存在」と高く評価する。1位の荘司康誠投手も19試合先発5勝3敗、防御率3.36で、来季以降へ期待が高まった。
西武6位の児玉亮涼内野手は、3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で源田壮亮内野手が右手小指を骨折し、開幕から2か月近く不在だった間、代役の遊撃手として穴を埋めた。1位の蛭間拓哉外野手は1軍初昇格が6月23日までずれ込んだが、1番、3番、5番をこなすなど実力をアピール。4位の青山美夏人投手は、シーズンを通して1度も出場選手登録を抹消されず、39試合0勝1敗3セーブ、防御率2.96で重宝された。
上記の4球団以外でも、阪神は浅野の“外れ1位”で獲得した森下翔太外野手が、シーズン終盤からクライマックスシリーズにかけて3番に定着し“大成功”。2位の門別啓人投手が19歳にして9月に1軍デビューし、2試合(先発1試合)に登板したことも来季への足がかりとなりそうだ。
個人では、日本ハム2位の金村尚真投手が開幕ローテ入りを果たし、プロ初勝利も挙げた後、右肩を痛めて結局1軍登板4試合にとどまった。それでも2勝1敗、防御率1.80で「いい素材であることは証明した」と野口氏。2年目以降の飛躍を予想する。ヤクルト1位の吉村貢司郎投手も12試合4勝2敗、防御率4.33に終わったが、故障で5月25日から約3か月間戦列を離れていただけに、実力はこんなものではない。
「中日の松山同様、オリックスの茶野(篤政外野手=91試合出場)、広島の中村貴浩(外野手=15試合出場)が育成選手として入団し、1年目に1軍まで這い上がったのは素晴らしかった」と野口氏。1年目に思うような成績を残せなかった選手たちや、体づくりに専念した選手たちの来季の“巻き返し”も楽しみだ。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)